研究課題
1)LC3は選択的オートファジーの鍵を握るのか? ポリスチレンビーズにトランスフェクション試薬をまぶし培養細胞に加えると、細胞に取り込まれた後サルモネラ同様オートファゴソームに選択的に包まれるので、その系を用いた解析を行った。まずAtg5-KOや Atg7-KO細胞などLC3-IIが形成されず標的にLC3がリクルートされない細胞でも、他のAtgタンパク質は全てリクルートされオートファゴソーム膜がビーズ周囲にできることを明らかにした(ただし、完全に閉じたオートファゴソームはできない)。次に主なAtgタンパク質についてビーズにリクルートされる順序をビデオ顕微鏡で検討し、LC3のリクルートが一番最後であることを示した。最も早く現れるのはAtg5複合体であった。Atg5複合体のリクルートがユビキチンに依存していることを、E1酵素阻害剤で確認した。さらにAtg複合体がどのようにしてユビキチンを認識するのか、その分子メカニズムを明らかにした。2)標的がユビキチン化されているのか? 上記の人工ビーズがオートファゴソームで包まれた後、細胞を破砕しビーズを細胞分画法にて精製したところ、LC3などと共に多数のユビキチン化タンパク質が検出された。ビーズはサルモネラのように自己のタンパク質を持たないので、これらは宿主細胞由来のタンパク質と考えられる。実際、ビーズを包むエンドソーム膜に存在するトランスフェリン受容体を調べると、通常は起こらないユビキチン化が観察された。また、LLOMeなどによってリソソームを傷つけてもユビキチン化が起こり、ユビキチン化されたリソソームのみがオートファジーの標的となった。
1: 当初の計画以上に進展している
まず実績概要に示したように、LC3がリクルートされなくても他のAtgタンパク質がリクルートされ、かつオートファゴソーム膜の形成が開始されること、LC3より先に他のAtgタンパク質がリクルートされることを明らかにしたことでLC3が選択的オートファジーの最重要因子であるという従来の定説を完全に覆した。さらに、Atg5複合体が最初にユビキチンを認識することや認識のメカニズムを解明し、従来説に代わって選択性を説明するモデルを提示した。そして選択性を規定するユビキチン化はこれまで考えられていたように病原体で起こる必要は無く、むしろ病原体を包むエンドソーム膜が傷ついたときにそこで起こることを示した。目標としていた成果を全て得ることができ、最初の年度の達成度は100%だと言える。
計画では2年目に、細胞死説の検証を行う予定になっている。過剰なオートファジーが起こる変異細胞の取得を試みるが、もしそれが難しい場合は、オートファジーを負に制御する因子のノックアウトなどで細胞死が起こるかを検討する。
平成24年度は当初の計画通り1,400,000円の予算を、2年目に予定している実験遂行のため主に消耗品の購入にあてる。
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