ゴルジ装置の酸性環境による細胞内ホメオスタシスの制御機構の分子メカニズムを明らかにするために、1)ゴルジ装置のpHセンサー分子ならびに内腔側pH依存的にゴルジ膜に結合するタンパク質(つまりセンサー分子の下流に位置すると思われる分子)の同定、2)pH依存的に膜タンパク質がゴルジ装置に局在するメカニズムの解明、という2つの研究計画目標を掲げた。 平成23年度では、ショ糖密度勾配超遠心法等で分画精製されたゴルジ装置の純度や酸性環境を保持できるインタクトネスやバッファー条件の改善を試みたが目的とするタンパク質を効率的に分離するには至らなかった。そこで、平成24年度では、遺伝子導入による強制発現によってGPHR欠損細胞の異常表現型を抑える遺伝子の同定という方法にフォーカスした。その結果、タンパク輸送遅滞と糖鎖修飾異常の両方を抑える事の出来る細胞質タンパク質Aを同定する事が出来たが、全長ではなかった。すなわちpHセンサー分子そのものかまたはすぐ下流に位置するタンパク質に結合することで正常化すると考えられたので、この新規タンパク質Aの結合に競合する遺伝子を、こんどはさらに強制発現によってタンパク質Aによって正常化した細胞でもう一度タンパク質の輸送遅滞を引き起こす事を指標に同定した。同定されたタンパク質Bは小胞体に局在する膜タンパク質であった。現在、両者の機能的相互関係の解析によってpHホメオスタシスの制御機構の解明を試みており、今後、着実な進展が期待される。2)GPHR変異細胞で見られるGBF1の局在異常の原因として、GBF1のゴルジ膜への結合パートナーであるPI4Pの濃度低下が起こっている事を明らかにした。現在、更にPI4Pの濃度低下の分子メカニズムの解明を試みている。PI4Pは、多くのタンパク質の局在や機能(とくにタンパク質輸送)に関わっている事が知られており、今後の発展が期待できる。
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