研究課題/領域番号 |
23657138
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岩崎 秀雄 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (00324393)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | シアノバクテリア / kai遺伝子 / サーカディアン |
研究概要 |
シアノバクテリアは概日リズムを示す最も単純な生物であり,全生物で唯一概日振動(体内時計)の試験管内再構成(時計蛋白質Kai, KaiB, KaiCおよびATPの混合によるKaiCリン酸化の自律振動反応)が確立している。生体内でも,このKai時計蛋白質によりゲノムワイドな遺伝子発現振動が引き起こされ,kai遺伝子を欠くと概日リズムは完全に消失するとされてきた。しかし,私たちは最近kai遺伝子群欠損株においても,少数の遺伝子群が有意な発現リズムを示すことを見出し,まったく未解明の振動体がKai振動体と細胞内で同居している可能性が示唆された。本研究では,このKai非依存型転写振動について,A.真の概日リズムなのかどうかの検証,B. 振動の分子機構,C. Kai依存性概日機構との関係性,D. 生理機能を明らかにすることを目的とする。 興味深いことに,ある特定の転写因子の破壊株でマイクロアレイを行ったところ,該当する遺伝子群にリズミックな転写制御が観察されるが,野生株ではリズミックではないことが明らかになった。また,kai遺伝子欠損株において,周期的な振動が見られないケースも観察されるようになり,まだコントロールできていない外環境の影響の可能性も出てきた。対象となる遺伝子群は,炭酸濃縮系に関わる遺伝子群であり,既にいくつかの制御因子が知られている。今後はそうした遺伝子群との関わりも含めて解析していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
追試の過程で培養,アレイ解析などで再現性が出ないケースがあり,どの程度の安定した現象なのかを詰めるのに時間を要している。しかしながら,シグマ因子の破壊株において,当該遺伝子の発現リズムが再度観察されたことから,kai遺伝子群とシグマ因子の関係性について新たな視点を提供することが出来たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
klo遺伝子発現リズムは概日振動か? klo遺伝子群は連続明で自由継続リズムを示すが,その振動は予備的調査では後述するように若干不安定であった。そこで,kai遺伝子破壊株において概日振動の特徴である温度補償性(周期長が温度に比較的依存せず,一定している性質)や温度・明暗変化による振動子の位相応答(時刻リセット)を検討し,概日振動の基準を満たすものであるか検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
kloのいくつかは炭酸濃縮機構に関わるsbtA- ndh遺伝子クラスターに属しているが,炭酸濃縮機構の概日振動や日周変化との関わりは不明である。そこで,kai非依存型転写リズムの炭酸濃度依存性を検討するとともに,klo遺伝子群のプロモーターを恒常的に発現するプロモーターに変更した場合に生育速度や炭酸濃縮過程に変調をきたすのかを検討する。また,昨年度観察されたシグマ因子群とklo遺伝子群の関係性について,分子遺伝学的な解析を行う。
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