研究課題/領域番号 |
23657140
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
笹倉 靖徳 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (10400649)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 脊索動物 / ホヤ / 母性因子 / トランスポゾン / ノックダウン |
研究概要 |
カタユウレイボヤにおいて、母性mRNAの新規ノックダウン法を開発した。そのノックダウン法の動作原理を明らかにすることと、ノックダウン法によりカタユウレイボヤ母性mRNAの局在機構を解明することを目的としている。ノックダウン法の原理を探る目的でノックダウンベクター内の必要構造を追求したところ、予想に反してGFP遺伝子がベクター内にあれば、ターゲットとなる遺伝子のプロモーターや5'UTRと連結しなくてもよいことが判明した。これと付随して、これまでKaede蛍光タンパク質遺伝子を用いてもノックダウンが生じるとしてきたが、解析の結果Kaedeでは生じないと結論された。その問題をさらに検証するため、レポーター遺伝子mAG, mKO2, mCherry, DsRed, LacZと母性遺伝子の上流領域をつないだノックダウンベクターを構築し、系統作製中である。今後はこれらの系統でのノックダウンの有無を追求していく。これらの系統作製を優先させたため、プラスミドインサーション法やSleeping Beautyトランスポゾンによるノックダウンについては今年度には間に合わず、来年度早々に系統作製を進める予定である。Cre-loxPを用いた新しいレスキューベクターについては、ベクターのデザイン及びベースとなるベクターの構築が終了しており、現在そのシステムを使った系統を作製している段階である。母性mRNAの局在化に関わる因子の探索を進め、RNA結合タンパク質及びモータータンパク質について母性での発現を検証した。まずEST解析から81種類の母性発現を示す遺伝子候補をリストアップした。続いて25種類についてin situハイブリダイゼーションによる発現を検証した。それらの全てがEST解析通り母性での発現を示したが、発現レベルは高くないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ノックダウンベクター内のGFP遺伝子の位置など、本動作原理を知る上で重要な知見が得られており、目的としている動作原理の解明に大きく近づいたと考えている。またその知見をさらに深めるための系統も樹立中であること、母性mRNAの局在化に関わる因子の候補のリストアップ並びにそのおおよそ1/3について発現解析が終了したことから、本年度での進展を元に、今後の2年間で目標を十分に達成できる位置に来ている。これらの理由からおおむね順調に計画は進展していると判断している。また平成23年度中に本ノックダウン法の最初の報告論文を仕上げ、学術雑誌へと投稿した。学術雑誌での研究発表が成果の肝になると考えており、このことも計画が順調に進展していると判断する理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に作製した系統でのノックダウンの有無を調べ、本技術の動作原理に必要なDNA配列を決定する。また予定していたSleeping Beautyトランスポゾンを用いた形質転換系やプラスミドインサーション法によっても系統を作製し、ノックダウンの有無を調べる。母性mRNAの局在化に関わる候補遺伝子の探索を引き続き行い、81種類の全ての候補についてin situハイブリダイゼーション法により卵での発現を確認する。卵で特有の発現パターンを示した遺伝子について、それらの機能を本年度に作製したCre-loxPシステムベクターにより破壊した系統を作製し機能解析を進め、本技術が様々な遺伝子へと応用できることを明らかにする他、本手法を元に母性mRNAの局在メカニズムを明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度中に作製したベクター構築について、その配列決定による確認のための解析費用、並びに系統作製のための野生型ホヤ代金とその送料の一部を平成23年度中に支払いの完了ができず、平成24年度初期にそれらの支払いを行い平成23年度予算を使用完了する予定である。また平成24年度には母性遺伝子の発現解析のための薬品代金及びプラスティック器具代金、これまでに樹立した系統の維持及び新しい系統作製のための消耗品費用への使用を予定している。さらに学会における成果発表のための予算及び論文発表のための経費を計上する。
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