研究課題/領域番号 |
23657140
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
笹倉 靖徳 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (10400649)
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キーワード | 脊索動物 / ホヤ / 母性因子 / トランスポゾン / ノックダウン |
研究概要 |
カタユウレイボヤにおいて、母性mRNAの新規ノックダウン法を開発した。そのノックダウン法の動作原理を明らかにすることと、ノックダウン法によりカタユウレイボヤ母性mRNAの局在機構を解明することを目的としている。このノックダウン法のレポーター遺伝子への依存性について前年度に引き続いて検証した。その結果、Kaede, DsRed, mKO2についてもノックダウンを起こすことができることが判明した。しかしながらレポーター遺伝子のノックダウンと母性遺伝子のノックダウンの間に相関が認められない例も生じることから、レポーター遺伝子にはeGFPを用いるのが最適であると結論づけられた。また、ターゲット遺伝子の5' UTRだけではノックダウンには不十分であり、プロモーター領域もノックダウンの効率化に影響することを明らかにした。去年の目標であった、Sleeping Beautyトランスポゾンを用いたノックダウン系統を2系統樹立したため、そのノックダウンの検証については来年度の課題である。ノックダウン系統をCre-loxPシステムによりレスキューするベクターについては、系統作製にまで至っており、遺伝子のノックダウンが確認でき次第レスキューを試みる予定である。母性mRNAの局在化に関わる因子の同定を目指し、本年度は特にモータータンパク質遺伝子に集中してin situハイブリダイゼーションによる候補の絞り込みを行い、6種類のミオシン遺伝子、2種類のキネシン遺伝子が母性発現を示すことを明らかにした。現在これらの遺伝子についてノックダウンの準備を進めている。またmRNAがカタユウレイボヤ初期胚後極に局在するPem3, ZF1遺伝子についてノックダウン系統を作製し、局在への関与を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ノックダウンベクターについて、そのレポーター遺伝子や5' UTR, プロモーターエレメントへの依存度を中心として本ノックダウン法の分子メカニズムを知る上での重要な知見が得られており、目的としている動作原理の解明に大きく近づいたと考えている。またその知見をさらに深めるための系統も樹立中であることや、母性mRNAの局在化に関わる遺伝子についてそのノックダウン系統を樹立しつつあることから、本年度での進展を元にして残り1年間で目標を十分に達成できる位置に来ている。これらの理由からおおむね順調に計画は進展していると判断している。本ノックダウン法の最初の報告となる論文については批評から帰ってきており、概ね良い評価であった。現在再投稿に向けた最終段階に来ており、このことも計画が順調に進展していると判断する理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に作製した系統でのノックダウンの有無を調べることにより、本技術の作用に必要なDNA配列をさらに絞り込む予定である。また母性mRNAの局在化に関わる因子について、ノックダウン系統を作製することで機能を解析し、それを通じて本手法を元に母性mRNAの局在メカニズムを明らかにする予定である。またCre-loxPシステムを用いたレスキューが可能であることも同時に調べ、本技術の有効性をさらに追求する。
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次年度の研究費の使用計画 |
系統作製のための野生型ホヤ代金とその送料の一部を平成24年度中に支払いの完了ができず、平成25年度初期にそれらの支払いを行い平成24年度予算を使用完了する予定である。また平成25年度には母性遺伝子の発現解析、遺伝子機能解析のための薬品代金及びプラスティック器具代金、これまでに樹立した系統の維持及び新しい系統作製のための消耗品費用への使用を予定している。さらに学会における成果発表のための予算及び論文発表のための経費を計上する。
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