カタユウレイボヤにおいて、母性mRNAの新規ノックダウン法を開発した。そのノックダウン法の動作原理を明らかにすることと、ノックダウン法によりカタユウレイボヤ母性mRNAの局在機構を解明することを目的としている。ベクター内のノックダウンに必要なエレメントの同定を引き続き進めた。まず、前年度作製したSleeping Beautyトランスポゾンを持ちいて作製した系統は、Ci-pem遺伝子のノックダウンを引き起こしたため、ノックダウンに必要なトランスポゾンベクターはMinosでなくてもよいことが判明した。また、ベクターに含まれる転写終結シグナル配列についても、SV40由来のものからウシのBGH遺伝子由来のものに変えたベクターでのノックダウンを確認した。 ノックダウンの動作原理を明らかにするために、GFPノックダウン系統と、類似の非ノックダウン系統において、卵巣卵におけるsmall RNAの発現をRNA seq法により解析した。結果、ノックダウン系統においてはターゲット遺伝子の5'UTRの相補鎖領域から、特徴的なsmall RNAが転写されていることが判明した。5'UTRがノックダウンに必要なことを考慮すると、このsmall RNAの合成がノックダウンを引き起こす原因であると強く推定される。また、GFP領域からも相補鎖small RNAが合成されており、このsmall RNAがカタユウレイボヤ卵におけるGFP遺伝子のエピジェネティックな発現抑制を引き起こしていると考えられる。 ノックダウン法を用いて、前年度に引き続きRNA結合タンパク質をコードする母性遺伝子の破壊を試みた。その結果、Y-boxタンパク質をコードする遺伝子の1つをノックダウンすることにより、Ci-pem遺伝子のノックダウン卵と類似した表現系が観察されたため、この遺伝子がCi-pemの局在に必要な可能性が示された。
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