研究課題/領域番号 |
23657142
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平良 眞規 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60150083)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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キーワード | 抗原抗体反応 / 一本鎖抗体 / 分子間相互作用 / 細胞間張力 / 張力センサーモジュール / 細胞運動 |
研究概要 |
膜結合型抗体を細胞膜や核内膜に特異的に発現させることで、生体膜という「場」における分子間相互作用の役割を解析するためのツールの開発を目指した。(1)抗体cDNAのクローニングと膜結合型抗体の作成。抗HAと抗Myc抗体のcDNAをハイブリドーマからクローニングした。次いで膜結合型抗体のコンストラクトを作成し、細胞膜の外側に向けて抗HA膜結合型抗体を発現させたところ、HAタグ付き分泌性蛋白質を捕捉することが示された。これにより分泌蛋白質の拡散性を調べることが可能となった。(2)一本鎖抗体(scFv)の作成。抗体の構造を簡略化し、分子間のS-S結合を省略することで発現を容易にする目的で、scFvを作成した。まず細胞外に分泌させて、抗体として機能するかを検討した結果、免疫沈降法で抗体活性が確認された。今後scFvを細胞内に発現させ、抗体としての活性が得られるかを検討する。(3)力学的な相互作用の解析。細胞間の力学的な相互作用の解析のため、張力の大きさによってFRET効率が変化する張力センサーモジュール(TSMod)に、Mycタグと膜貫通ドメイン(TM)を融合させたMyc-TSMod-TMを構築した。それを隣接する細胞の一方に発現させ、他方に抗Myc抗体-TMを発現させることで、抗原抗体反応で細胞間に架橋させることを目論んだ。しかし期待したほどFRET効率の劇的な変化は認められず、今後はより厳密な測定方法の開発が必要と考えられる。(4)細胞間架橋による発生への影響。上記(3)の解析過程で、細胞間の架橋により発生異常が引き起こされることに気が付いた。この結果は、細胞間の滑りを制御することが原理的に可能となったことを示しており、今後それを用いることで、発生における細胞運動と力学的な滑りの強さとの関連性を検討することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗HA一本鎖抗体が胚に対して毒性を示したため、この実験を一時中断し、別の実験計画を優先させた。特に、張力センサーモジュール(TSMod)を用いた細胞間の力学的測定に力を注いだ。当初FRET効率が場所によって違いがあるように測定されたため、張力の違いが測定できたと考えたが、再現性があまりなく、測定上の問題も考えられ、より厳密な方法を模索した。今までのところ解決策は見出せていない。しかしこの実験の過程で、細胞間を抗原抗体反応で架橋することで発生異常を生じさせることを見出したことで、新しい展開が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画がやや遅れたため、次年度に研究費を持ち越して、以下の研究を継続することとした。(1)毒性のない抗Myc一本鎖抗体(aMyc-scFv)を用いて、細胞内に発現させ、抗体分子として機能するか否かを検討する。もし機能した場合は、細胞質や核内に局在させることを試みる。(2)張力センサーモジュールをもつMyc-TSMod-TMと抗Myc抗体-TMを発現させる領域を背側帯域、背側動物極側などに変化させて、細胞間架橋による発生異常を検討する。発生異常を来した発現領域と発現量を用いて、張力の違いによるFRET効率の差が観察できるか否かを検討する。その他の計画についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として消耗品に用いる。
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