研究課題
ほとんどの動物で、受精は卵減数分裂の途中に成立する。では「なぜ、精子星状体は卵減数分裂に干渉しないでいられるのか?」本研究ではヒトデ卵を用い、この問題を解析した。ヒトデ卵母細胞は、卵核胞崩壊(GVBD)後に受精させると(BD受精卵)、多精し難く、精子星状体は卵減数分裂に干渉しない。一方、GVBD以前に受精させると(GV受精卵)、多精になり、精子星状体は卵減数分裂に干渉し、発生が異常になる。この結果から、GV受精卵の精子星状体は、卵星状体と同様に、紡錘体形成能を持つことが確かめられた。しかしBD多精卵の第一分裂中期においては、受精後約20分において、すでに卵中心体から形成された星状体が卵染色体と相互作用しており、そのために第一減数分裂中期では精子星状体が卵減数分裂に干渉できないことが明らかになった。一方、第二減数分裂中期では精子星状体は発達するが、卵―精子星状体の距離が数μmであっても、干渉率が低く5%程度であった。この結果から、BD受精卵の精子星状体は、卵星状体と質的に異なっていることが分かる。その差を明らかにするために、GV多精卵のGVBD後の動物極または植物極にそれぞれ存在している精子星状体のサイクリンB量を定量したところ、動物極>植物極であることが明かになった。この星状体のサイクリンB量は、GV内容物を細胞質移植すると顕著に増加した。さらにBD多精卵紡錘体極のサイクリンB量は、近傍の干渉していない精子星状体より顕著に高かった。従ってサイクリンBがGV内容物の影響で、GVBD過程においてGV近傍に位置した星状体により多く蓄積し、星状体微小管が染色体と相互作用できるようになることが強く示唆された。正常受精(BD受精)ではGV内容物がGVBD後に拡散・希釈されるために、精子星状体サイクリン量が少なくなり、干渉できなくなると考えられる。
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Curr Biol.
巻: 23 ページ: 775-781
10.1016/j.cub.2013.03.040.