研究概要 |
初期胚での単一転写因子の異所発現による運命転換: C. elegans熱ショックプロモーターhsp16-2を有する線虫の発現ベクターpPR49.78にhlh-1cDNAをつないだプラスミドを作成し、体壁筋マーカーであるmyo-3::mCherryとともにマイクロインジェクショしトランスジーンを作成した。神経細胞への分化転換の試み: 遺伝子発現系と神経細胞分化の検討系の構築:哺乳類の線維芽細胞から神経細胞へのダイレクトリプログラミング実験でVierbuchenらが利用した遺伝子のC. elegans ホモログ候補であるhlh-3, hlh-6, hlh-14; ceh-6, unc-86; ekl-2 各遺子のcDNA、および、E/daughterlessのC. elegansオーソログであるhlh-2 cDNAの計7種cDNAをそれぞれpPR49.78に挿入した発現用コンストラクトを作成し、これら全てを混合して野生型線虫にマイクロインジェクションし、形質転換体系統 ncEx2282を作成した。 次に、神経細胞分化の検出用に汎神経細胞マーカーを持つ系統,ST2 (ncIs2[pH20::GFP]), NW1229 (evIs111[F25B3.3::GFP]), SD1439 (gaIs234[jkk-1p::HIS-24::mCherry]), OH441 (otIs45 [unc-121::gfp])を準備し、これにncEx2282を導入した。遺伝子発現誘導実験: ST2系統にncEx2282を導入した幼虫に対して、全身熱ショック処理をほどこし、1-2日後に異所的にGFP発現細胞の存在が検出された。 さらに他のマーカ系統でもでも同様の実験を行い各神経細胞マーカーの異所発現が見られたことから、異所的な神経細胞が作成されたことを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
神経細胞への分化転換の試み: 今回導入した7種類のcDNAの内、最低どれだけの組み合わせで異所的神経細胞が生み出せるか明らかにする。hlh-14、hlh-2をベースに他のcDNAを様々に組み合わせてトランスジェニック系統を作製する。また、新たに分化した神経細胞の特性を知るために、神経細胞分化マーカー(Cholinergic:unc-17, GABAergic:unc-47, Catecholaminergic: cat-1各遺伝子のプロモーター下流に蛍光蛋白質cDNAをつないだトランスジーンを作成)を利用して神経細胞種を同定する。さらに、神経細胞の起源を特定するため、IR-LEGOによる幼虫単一標的細胞での遺伝子発現実験を行う。 また、新たに生じた神経細胞が他の組織の特性を残しているかどうかを知るために、組織特異的マーカーの発現を調べる。初期胚での単一転写因子の異所発現による運命転換:転換誘導実験を行う。 神経細胞誘導実験がExtrachromosomal arrayを利用した系統が行えたことから、他の実験でも予定していたトランスジーンの染色体への組み込みは、現時点では不要であると考えている。未分化細胞の誘導の試み:予定通り実験を進め、プラスミドコンストラクション・線虫トランスジェニック系統作成を完了させて、転換誘導実験を行う。
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