研究課題/領域番号 |
23657147
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
斎藤 潤 京都大学, iPS細胞研究所, 講師 (90535486)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | iPS細胞 |
研究概要 |
疾患特異的iPS細胞研究を行うためには、適切な表現型を持つiPS細胞クローンを適切な数だけ樹立し、維持分化を行わなければならない。従来の方法では多数の患者さんからiPS細胞株を樹立することが労力的に困難であったり、数百万個以上の繊維芽細胞から数クローンを選択するため、適切な表現型や分化特性を示す細胞を取りもらしたりする可能性がある。そこで本研究では、疾患特異的iPS細胞研究の促進のため、樹立iPS細胞のクローニングを行う前に適切な分化能をもった機能的なクローンを取りもらしなく選ぶ方法を開発することを目的とする。方法として、以下の5ステップの実験を行う。ヒトES/iPS細胞を用いた、セカンダリiPSシステムを確立し、セカンダリiPSシステムを用いて、クローニングなしでiPS細胞の培養を行う。こららの細胞を血球系細胞に分化させ、血球系前駆細胞に分化した細胞だけをソートして、そこからiPS細胞を誘導する。 本年度は、セカンダリiPS細胞システムに必要なベクターの作成と、血球分化系の整備を行った。ヒトで薬剤誘導性に山中4因子を発現するベクターを作成した。また、血球分化系の分化段階を詳細に解析する必要があるため、モデルとして、ヒトiPS細胞からヘマンギオブラスト、血球系前駆細胞を経て単球、マクロファージ、樹状細胞へと分化する系を新規に開発した。ベクターを導入したiPS細胞をこの系で分化させ、セカンダリiPS細胞を各分化段階で作成していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では、効率がよくリークがないベクターを作成することが極めて重要であるが、これは本年度で達成できた。また、血球分化系の改善も行うことができ、血球の各分化段階を詳細に解析することが可能になった。来年度以降で、実際に系を走らせることにより、結果が速やかに得られることが期待されるので、ほぼ順調であると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね順調に進んでいると考えているので、引き続き計画を進める。 昨年度作製したコンストラクトを用い、4因子を細胞に導入する。Tet存在下で未分化なコロニーとして出現してきたもののうち、TRA-1-85陽性(ヒト細胞)かつTRA-1-60またはSSEA4陽性細胞だけをソートし、Rock阻害剤存在下で別のフィーダーに移してES/iPS細胞維持培地で培養する。これらの細胞群を血球系前駆細胞に分化させるCD34+KDR+分画もしくはCD45+CD34+分画を回収し、陰性分画を別途回収して次の実験の対照とする。ソートした細胞に薬剤を加え、初期化する。初期化によりiPS細胞になった細胞群をクローニングし、個々のクローンを血球分化させ、対照群と分化能を比較する。その後、これらの細胞を血球に分化させる。エピジェネティックメモリが維持されていれば、血球分化する細胞が大量に得られるはずであるが、うまくいなかった場合は、初期化の条件を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、平成23年度と同様、主に消耗品代として使用する予定である。具体的には培養用試薬(サイトカインなど)と消耗品(培養皿など)が主であり、その他RT-PCR、免疫染色などに必要な試薬も購入する。来年度は最終年度であることから、海外学会や国内学会で発表する予定にしている。
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