研究課題
ハゼ科に属するヨシノボリの雄は、同種の雌には求愛する一方、別種の雌は排他する。このような識別に依存した行動選択の神経基盤を解明するため、1) ヨシノボリの脳アトラス作成による各神経核の同定と、トランスクリプトーム解析によるペプチドホルモンや神経伝達関連遺伝子の塩基配列の同定を進め、非モデル動物であるヨシノボリでの解析に必要な基盤情報の整備を推進した。2) 最初期遺伝子c-fosの発現を指標として、行動に伴い活動した神経細胞の局在パターンを求愛時と排他時で比較した。1) 名古屋大学 生命農学研究科の山本直之 教授にご協力をいただき、ヨシノボリ雄の脳切片を作成した。現在、他のハゼ科魚類やキンギョなどと比較し、各神経核の同定を進めている。また、愛媛大学 沿岸環境科学研究センターの仲山慶 講師と協同で次世代シークエンサーによるmRNA配列の解析を行った。現在、CLC Genomics Workbenchを用いて、同じスズキ目のティラピアやダツ目のメダカなど魚類モデル動物の既知配列に対するBLASTを行い、ヨシノボリの遺伝子ホモログの同定を進めている。2) 水槽内で巣作りさせたヨシノボリの雄に同種・別種の雌を提示し、求愛・排他行動を惹起した。30分後に雄の脳をサンプリングし、c-fosに対するin situ hybridizationを行った結果、求愛と排他では、いくつかの脳領域に活動の違いが確認された。求愛の際には中脳視蓋から視床前核を経由して終脳背側野側部へと、視覚の伝導路に沿って神経活動が伝達されているが、排他の際にはこのような伝達が確認されなかった。また、下垂体前葉や視床下部でも、排他より求愛の際に神経活動が多く観察された。ヨシノボリの雄は雌を視認して行動を開始する事から、視覚刺激が行動選択の開始シグナルであると考えられ、中脳視蓋が種の判別と行動選択の中枢であると考えられる。
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Marine Pollution Bulletin
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