研究課題/領域番号 |
23657152
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
影山 裕二 神戸大学, 遺伝子実験センター, 准教授 (90335480)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / マイクロペプチド / 細胞間情報伝達 / 細胞突起形成 |
研究概要 |
PRIペプチドの細胞情報伝達における機能を推測する際に、PRIペプチドの細胞内局在は極めて有用な情報となると考えられるため、今年度は以下の研究を行った。1) 細胞内におけるPRIペプチドの挙動の解析合成PRIペプチドを抗原とした抗PRIペプチド抗体を作製し、合成ペプチドに対して一定の抗体価を示すものが得られたため、これを用いてショウジョウバエ胚の細胞画分に対するウエスタンブロット法、および全載標本に対する免疫組織化学法を行ったが、残念ながら内在性PRIペプチドに対する特異的なシグナルは得られなかった。これらの結果の解釈として、内在性PRIペプチドの発現量が非常に低いか、翻訳後修飾を受けているために合成ペプチド抗原とする抗体では検出が困難である可能性が考えられた。2) 融合PRIペプチドを発現するトランスジェニック系統を用いた解析PRIペプチドを各種分子タグ(HAおよびFLAGのダブルタグ)との融合ペプチドとして過剰発現発現するトランスジェニック系統および安定発現細胞株を用い、分子タグに対する抗体を用いてPRIペプチドの検出を試みたところ、トランスジェニック系統では満足な結果が得られなかったものの、安定発現細胞株では免疫沈降を行うことにより予想よりもやや大きな分子量を示すシグナルが得られた。これらの結果は、PRIペプチドが細胞内で翻訳後修飾を受けることを示唆している。また、用いたトランスジーンでは5'UTRや翻訳開始配列をショウジョウバエに至適化しているにもかかわらず、検出が困難であったことについては、翻訳開始点付近以外のORF上の配列が原因で翻訳効率が悪いか、あるいは細胞内ではPRIペプチドが不安定なために存在量がごくわずかにとどまっている可能性が考えられる。なお、これらのトランスジーンについては、ノザン法によりmRNAが過剰に発現してることを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予想よりもPRIペプチドの発現量がはるかに少なく、また、PRIペプチドが細胞内で翻訳後修飾受けている可能性を示唆する結果を得ている。これらの結果は研究計画の想定を超えたものであるが、マイクロペプチドという新規の活性分子の特徴の一端をあらわすものと捉えることができる。また、分子タグとの融合ペプチドに対する免疫沈降法により、間接的にペプチドを検出することに成功したことは、アフィニティーカラムクロマトグラフィーによる精製の可能性という新たな道を開いたという意味で、今後の研究に有用な成果であったと考えることができる。
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今後の研究の推進方策 |
1)細胞内における PRIペプチドの構造の決定PRIペプチドの発現量が少なく、また、PRIペプチドが細胞内で翻訳後修飾受けている可能性を示唆する結果を受けて、細胞内におけるPRIペプチドの構造を同定する。分子タグとの融合ペプチドを発現する安定発現細胞株と分子タグに対する抗体を用いたアフィニティカラムクロマトグラフィーによる粗精製を行い、融合ペプチドを含む画分を用いて質量分析計による解析を行う。また、決定した融合ペプチドの構造をもとに、改めて抗体を作成し、これを用いた細胞学的解析を行う。アフィニティカラムクロマトグラフィーの際に共精製されたタンパク質がある場合は、質量分析計を用いてこれを解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
作成した合成PRIペプチドに対する抗体が当初の目的には適さないことが判明したため、これを用いた実験を延期し、細胞内での融合ペプチドの構造を決定した後、改めて抗体を作成するよう計画を変更した。これに伴い、今年度への繰越が生じたものの、それ以外は計画通りに研究を執り行う。
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