研究概要 |
PRIペプチドは稿藤堂汚物で最も短い機能的ORFにコードされる11アミノ酸のペプチドであり、シグナル配列を含まないにもかかわらず、遺伝学的解析からは細胞非自立的な作用を示すことが知られている。 PRIペプチドの細胞情報伝達における機能を推測する際に、PRIペプチドの細胞内局在は極めて有用な情報となる。以下の解析を行い、PRIペプチドの細胞内局在を解析した。 計5種類の合成PRIペプチドを抗原とした抗PRIペプチド抗体を作製し、ショウジョウバエ胚の細胞画分に対するウエスタンブロット法、あるいは全載標本に対する免疫組織化学法を行ったが、欠失変異体と比較して顕著なシグナルを示す抗体は得られなかった。また、PRIペプチドを各種分子タグ(HA, myc あるいは FLAG)との融合ペプチドとして発現するトランスジェニック系統を用い、分子タグに対する抗体を用いて、PRIペプチドの細胞内局在の解析を試みたが、現在までのところ全くシグナルは検出できていない。上記タグ付きペプチドを安定的に発現する細胞株を用い、免疫沈降及びウエスタンブロット解析により、細胞外への分泌の可能性を検討したところ、細胞核及び細胞質の画分にはタグ付きPRIペプチドの発現がわずかに検出されたものの、培養上清への分泌は検出できなかった。なお、免疫沈降の際に、PRIペプチドに特異的に結合すると思われる因子は、銀染色法では全く検出できなかった。これらの実験はいずれも、PRIペプチドの発現量が極端に少なく、通常の方法の解析では非常に検出しにくいことを示す。残念ながら本研究においては発現細胞以外にPRIペプチドが輸送されるかどうかについては未解決のままとなったが、少なくとも、細胞外へのPRIペプチドの分泌はないか、あったとしてもごくわずかの量に過ぎないことを示差する結果となった。
|