研究課題/領域番号 |
23657153
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設) |
研究代表者 |
高田 慎治 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンタ―, 教授 (60206753)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 遺伝子 / 細胞・組織 / 発生・分化 |
研究概要 |
生物は様々なリズムにより制御されており、概日リズムや発生期における体節形成のリズムはすでによく研究がなされている。本研究では、未知なるリズムを探索する試みとして、脊椎動物胚において体節とともに周期的な分節構造を形作る咽頭弓に着目し、その形成周期を制御する分子機構を解析する。咽頭弓の分節形成には、体節の分節周期を生み出す遺伝子は関与しないことが示唆されているが、研究代表者はこれまでにRipply3という新規転写調節因子が、咽頭弓の形成に相まって特徴的な発現変化を繰り返すことを見いだしている。そこで、Ripply3の時間的な発現変化をタイムラプス観察により直接的に明らかにし、その時間的発現変化を生み出す分子メカニズムを解明する目的で、Ripply3の転写開始点上流の配列にEGFPを繋げた融合遺伝子を作成し、それを用いてトランスジェニックマウスの作成を進めてきた。平成23年度は、トランスジーンがゲノム中に組み込まれかつ子孫に伝達されることが確認できている複数の系統のトランスジェニックマウスを観察し、胎生9日前後において、Ripply3遺伝子の本来の時空間的発現パターンがトランスジーンにおいても再現できていることを、多数のトランスジェニック系統で確認した。これら系統の中に、トランスジーンの発現量が比較的高いものが2系統存在したので、それらに注目して以降の実験を行うことにした。また、トランスジーンの発現の時間変動を追うために必要な胎生9日胚を用いた全胚培養系も確立できることが確認できた。これらの実験材料の整備が行われたことにより、次年度以降に本研究を展開する基盤が形成できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画時に本研究への参加を想定してた大学院生が、都合により参加できなくなったため研究の立ち上げが予定より数ヶ月遅れた。しかしながら、その後に適切な人員配置を行うことにより、研究は軌道にのりつつある。具体的には、平成23年度の研究実施計画に掲げた事項のうち「Ripply3遺伝子の本来の時空間的発現パターンを再現し、かつEGFPの発現量が最も高い系統を選別する」ことは達成でき、「タイムラプス観察のための胚の培養条件の検討」もほぼ順調に達成されつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の目的を達成するために以下のような研究を行う予定である。(1)咽頭弓領域におけるRipply3の発現変動のイメージング: 平成23年度に引き続き、Ripply3の発現変動の時空間的変化の詳細を多数の胚を用いて観察し、Ripply3の遺伝子発現の変動周期、発現パターンの時空間的変化を詳細に明らかにする。(2)Ripply3の時間的発現変化の制御機構の解析:[2-1]Ripply3の時間的発現変化に関わる因子の探索: 研究代表者はすでにRipply3の転写開始点上流の配列内にいくつかの特徴的な転写調節因子の結合配列を見いだしている。そこで、そのような因子が実際にRipply3遺伝子の発現制御に関わるかどうかを、培養細胞系用いたレポーターアッセイなどにより明らかにしていく。また、必要に応じて、同様のレポーターアッセイをマウス胚においても行う。[2-2]Ripply3の時間的発現変動の再構成: [2-1]で同定した因子によって実際にRipply3遺伝子の時間的発現変動が引き起こされるかを検討するため、同定した因子の遺伝子と転写開始点上流を含むRipply3遺伝子とを培養細胞で発現させ、咽頭弓で見られたRipply3の時間的発現変動が再現されるかどうかを検討する。再現できた場合には、この因子とRipply3の相互作用がRipply3の発現変動を生み出す本体であることが強く示唆される。一方、そのような変動が再現できない場合には、さらなる因子の同定を試みる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究費はすべて研究の遂行に必要な消耗品(試薬類、プラスチック器具)の購入に充てる予定である。
|