研究課題/領域番号 |
23657158
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
遠山 弘法 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 学術研究員 (00571837)
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キーワード | 雑種集団 / ゲノムの置き換わり / AFLP / QTL / 光環境 |
研究概要 |
エイザンスミレ、ヒゴスミレの雑種集団の解析について 形質から判断された雑種集団(約1 km×1 km)で1か所あたり6個体ずつ30箇所から採集し、実際に雑種かどうかをmtDNA(atpI-atpH)、AFLPを用いて調べた。結果、エイザンスミレ、ヒゴスミレに特有のAFLPバンドの両方を持っている個体が、雑種集団内で81個体(58.3%)見つかった。また、ヒゴスミレを母系に持ちながら、ゲノムがエイザンスミレに置き換わっている雑種が9個体つかった。これらの結果は、林床環境に適応的な遺伝子が、雑種形成後、集団中に固定されてきたことを示唆する。また、これまでの研究から種間で多様化している葉形質を測定したところ、Hybrid indexと形質には正の相関がみられた。この結果は、光環境の適応に重要だと考えられる葉形質は、両種を識別するのに重要な形質である事が示唆された。以上内容で草稿を準備し、再投稿準備中である。 QTL解析について F2個体443個体についてDNA抽出と5プライマーセットでのAFLPによる多型解析を行った。現在、波形を読み取る作業を順次進めている。形質測定は、葉面積、葉重/面積、葉数、開放花数、閉鎖花数のに対して行った。現在解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、エイザンスミレ、ヒゴスミレのそれぞれの葉からRNAを抽出しcDNAを合成、そして、次世代シーケンサーを用いて発現している遺伝子を網羅的に解析し、種間で異なる発現パターンを持つ遺伝子を特定し、マーカーを作成する予定であった。しかし、RNAの抽出がうまくいかず解析が進まなかった。そのため、24年度はAFLPによる多形解析を行い、QTLマッピングを進めた。AFLPは波形の読み取り、再現性の確認に時間がかかるため、進捗状況としてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
エイザンスミレ、ヒゴスミレの雑種集団の解析 論文化する。 QTL解析について AFLPでのF2世代を用いた連鎖地図の作成を行う。また、F2世代の花形質、葉形質、資源分配形質の測定を行いQTL解析を行う。ただし、相関がある形質については、前もって主成分分析により次元を減らし、その主成分得点に対してQTL解析を行う。QTL解析は、F2個体のマーカー遺伝子型と表現型値を調べ、形質に関わるQTLの位置を染色体上で特定する。そして、近接するマーカー遺伝子型に基づいてQTL遺伝子型を推定し、最尤法により遺伝効果を推定する。遺伝効果の推定から、トレードオフに関わる遺伝子座群から拮抗的な多面発現効果を持つQTLを検出できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文化に向けての英文校閲、掲載料の支払を行う。 エイザンスミレとヒゴスミレは姉妹種といわれているが、形質データからのみである。そこで、日本のスミレ属全体の系統樹作成を行い上記の事を確認したいと考えている。25年度はスミレ属のサンプリングのための旅費として研究費を利用したいと考えている。 また、データ解析のためのパソコンの購入も考えている。
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