研究課題/領域番号 |
23657159
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
伊藤 道彦 北里大学, 理学部, 准教授 (90240994)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 非コードエクソン / プロモーター / DMRT1 / イントロン / 分子進化 / 遺伝子進化 / 脊椎動物 / オルソログ |
研究概要 |
初年度である本年度は、非コードエクソン1の分子進化において、アフリカツメガエルおよびメダカの性決定遺伝子Dm-WおよびDmyのプロトタイプ遺伝子Dmrt1に注目し、解析を行った。4種の脊椎動物種(魚類メダカ、両生類アフリカツメガエル、鳥類ニワトリ、哺乳類マウス)の成体あるいは未成熟の精巣のRNAを用いて、各Dmrt1オルソルグの転写開始点の決定を行ったところ、メダカ、アフリカツメガエル(この種は異質4倍体で、2種のDmrt1 遺伝子が存在するが、Dmrt1 alphaの遺伝子での解析)共に、非コードエクソン1を保持する事がわかった(Chromosome Res 2012)。非コードエクソン1の存在は、Dmrt1遺伝子の重複によって誕生したDm-W、Dmyも同様であった。興味深い事に、ニワトリ、マウスDmrt1遺伝子は、コードエクソン内に転写開始点があると解釈することができた。すなわち、非コードエクソン1が無いと考えられた。これを傍証するために、マウス、ニワトリに加え、データ量の多いヒトに関して、ESTデータベースで検索を行ったところ、非コードエクソン1を保持するDmrt1 cDNAは存在しなかった。これらの結果から、Dmrt1オルソログは、両生類以降の脊椎動物の進化過程で、非コードエクソン1を失ったと考えられる。一般的に、非コードエクソン1の創出はプロモーターの多様化を意味するので、一端多様化に向かったDmrt1 遺伝子のプロモーターは、脊椎動物の進化過程で退化的分子進化した可能性が考えられた。性決定システムが環境によって左右されない恒温動物では、先祖型のプロモーターのみを選択したという進化仮説を考える事ができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である本年度は、生殖巣の性差構築システムに関わるDmrt1遺伝子の分子進化の解析を行い、非コードエクソン1の退化と生殖巣形成システムとの連関を考察することができた(Chromosome Res 2012)。順調に進展してきていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
主な今後の推進方策を以下に記す。(1)Dmrt1遺伝子における非コードエクソン1の分子進化の解析を、爬虫類種で試みる。(2)脊椎動物進化過程でDmrt1と同様な分子進化を行ったと考えられる遺伝子を、探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は最終年度である。本年度3月に研究補助に対する謝金を次年度4月に支払う予定である。残額は、次年度に、試薬、キット、動物購入・飼育に使用予定である。
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