研究課題
ヒメミカヅキモには、+型と-型の遺伝的に決定された性を持つヘテロタリック株(以下、ヘテロ株)と、1細胞由来の同一クローン同士で接合子をつくるホモタリック株(以下、ホモ株)が存在する。ホモ株では、一つの細胞が有性分裂を行うことで生じた、二つの姉妹配偶子嚢細胞同士で接合子を作りやすく、近縁なヘテロ株との交配でハイブリッド接合子を作ることから、有性分裂によって、姉妹にヘテロタリック株に相当する性分化が生じていると考えられた。今年度は、ホモ株の性分化の実態を、生理学的な掛け合わせ実験を通して解析することとした。1.ヘテロタリック株と安定してハイブリッド接合子を形成するホモタリック株の確立 これまでに予備的な解析を重ねてきたホモ株(kodama20; NIES-2666)は、+型のヘテロ株とはハイブリッド接合子を形成するが、-型とは形成しなかった。そこで、新たにフィールドから単離したいくつかのホモ株を用いてヘテロ株との掛け合わせを行ったところ、両性のヘテロ株ともハイブリッド接合子を形成しうる2種のホモ株(hana1, naga37)を見出すことに成功した。これにより、ホモ株の有性分裂後に生じる姉妹配偶子嚢細胞は、ヘテロ株の+型、-型の両性に相等する性を持った細胞である可能性が高まった。2.有性分裂後の姉妹配偶子嚢細胞の単離培養と生理学的特性解析 有性分裂直後の複数の姉妹配偶子嚢細胞をキャピラリーにより分離し、あらたにクローン株を作出した。これらのクローン株は自家接合子形成率が低下するものが多かったが、その場合ヘテロ株との混合でもハイブリッド接合子形成が見られなかった。さらに、これらの株ではPR-IP Inducer遺伝子の発現量の低下も見られた。
3: やや遅れている
性フェロモンPR-IP Inducerのオーソログ分子をコードするcDNAは単離し、新規に確立したクローン株における遺伝子発現を調べることには成功したが、PR-IP Inducer遺伝子を含むゲノムDNAの単離に成功しておらず、プロモーター領域を利用したレポーター試験にまで至らなかった。
ホモ株のゲノムからPR-IP Inducer遺伝子単離を、条件を変えて試みる。単離したプロモーター領域を利用して、レポーター遺伝子を連結して、有性生殖誘導した際、どのタイミングで発現が誘導されるのかを検討する。一方で、ヘテロ株における+型細胞特異的な受容体型キナーゼであるCpRLK1のオーソログ分子を特異抗体により検出することで、有性分裂後の性分化の様子を解析する。また、ハイブリッド接合子を安定的に生じさせるための、生理条件についても検討する。また遅れ気味であるヘテロ株の概要ゲノム計画の進展によっては、それをreferenceとして、新型シークエンサーによるtranscriptome解析にも取り組む予定である。
2011年度に完了しなかったPCRによるゲノムDNA増幅、コンストラクト作製、形質転換を行うため、繰り越した研究費より遺伝子工学的な試薬の購入を予定している。また、CpRLK1オーソログ分子に対する特異抗体産生も計画しており、そのための費用として本年度配分予定の研究費の使用を計画している。ヘテロ株の概要ゲノム計画の進展によっては、新型シークエンサーによるtranscriptome解析にも取り組むため、順調に進んだ場合、基金制度を最大限活用(前倒し使用)する予定である。
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The international review of Cell and Molecular Biology
巻: 297 ページ: 印刷中
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