研究課題
現代社会の抱える問題の一つにストレスの増大がある。ストレスの問題は、単に医学・生物学的なものだけではなく文化・社会的な要因も絡み、多様なストレス像が存在している。「病は気から」と言われるように、精神・心理的な抑圧は身体の免疫力を低下させることが知られている。その精神・心理的ストレスを非侵襲的かつ簡便な、しかも、定量的方法で測定できれば、心の健康のモニタリングにも貢献できる。本研究の目的は、非侵襲的方法で測定できるストレスマーカーの探索とマーカーとしての妥当性・有効性を確認することである。そこで、ヒトに常在し潜伏感染しているウイルスがストレスにより活性化する点に注目し、ウイルスの再活性化を社会的・心理的ストレスの新たな指標とする試みを展開した。ヒトに潜伏感染するウイルスは多々あるが、唾液中に排出されるEpstein-Barrウイルス(EBV)を用いることで非侵襲的方法に通じ、また、唾液中に分泌されるαーアミレースは近年ストレスマーカーとして注目されているので、αーアミレースも併せモニタリングした。共同研究を行っているタイ国コンケン大学医学部において、「運動と免疫・ストレス」に関する研究が行われていたので、唾液中のEBVとαーアミレースのモニタリングを行った。αーアミレースはストレスに対し敏捷にはんのうし、短時間のモニタリングに適していることがわかった。一方、DNAコピー数でモニタリングした唾液中EBV量は、およそ1週間程度遅れて推移していることが推察された。αーアミレースとEBV量の変動パタンの波形は一致しているわけではなく、EBVある程度の期間中のストレス量を積分したパタンと考えられた。すなわち、αーアミレースは即効性のマーカー、EBVは遅効性のマーカーと捉えられ、EBVはストレスの存在を遡って推測でき、両者を併用することでストレス評価がより密になると期待された。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Asian Pacific Journal of Cancer Prevention
巻: 15 ページ: -
American Journal of Primatology
巻: 75 ページ: 1185-1195