概日リズムは、睡眠や学習の効率など生活の質とも密接に関わることから近年、非常に注目されている。概日リズムの光調節は、非視覚に関わる光受容タンパク質の一種・メラノプシンが担っていることがわかっている。前年度までの研究によって、哺乳類メラノプシンおよびヒトメラノプシンとのキメラメラノプシン(近似ヒトメラノプシン)の培養細胞での大量発現に成功した。また、哺乳類のメラノプシンの生体内発現分布をリアルタイムPCRを用いて明らかにした。 本年度は、近似ヒトメラノプシンに多型変異を導入した変異メラノプシンに関して、培養細胞での発現および分光学的解析に成功した。また、メラノプシンと同様、哺乳類の非視覚系光受容タンパク質として近年非常に注目されているエンセファロプシン(Opn3)について、そのホモログの機能解析に成功し、論文として発表した(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2013)。 研究期間を通じて実施した研究によって、メラノプシンを中心とした哺乳類において視覚以外の光受容に関わる光受容タンパク質について、これまで困難とされていた培養細胞を用いたタンパク質機能解析系の構築に成功した。この系を用いることで、非視覚系光受容タンパク質に存在する多型のタンパク質レベルでの解析が可能となり、その多型が関与する表現型の予測および疾患などの発見、さらには治療や対処のためのタンパク質機能に基づく知見を得ることが期待できる。
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