タバコなどの植物では、葉緑体の形質転換が可能であり、緑葉細胞にパーティクルガンを用いて外来遺伝子を導入する系が確立されている。一方、ミトコンドリアの形質転換系は報告されていない。他方、アグロバクテリウムによる核の形質転換の場合は、核移行シグナルを持つVirD2とVirE2がT-DNAに結合しT-complexを形成し、T-DNAを保護すると同時に核に移行させる。本研究では、このVirD2とVirE2にミトコンドリア移行シグナル配列を付加した改変アグロバクテリウムを作成し、T-DNAをミトコンドリアに輸送(宅配)させることを目指した。(1)ミトコンドリア宅配型アグロバクテリウムの作成ミトコンドリア移行シグナル(シロイヌナズナ gamma subunit of mitochondrial F1-ATPase) + 核移行シグナルを除去したVirD2 + RFPを連結した合成DNAを作成し、Agrobacterium tumefaciens EHA101に導入した。相同組換えによりVirD2のN末端にミトコンドリア移行シグナル、C末端にRFPが連結されたアグロバクテリウムをPCR解析により選抜した。得られたアグロバクテリウムには、非相同組換えにより導入遺伝子が少なくとももう1コピー存在すると考えられた。(2) ミトコンドリア発現用ベクターの構築:ミトコンドリア26S ribosomal RNA遺伝子(rrn26)のプロモーター(400bp) + SD配列を付加したGFP + nad6 3’(200bp)を連結した合成DNAを作成した。この遺伝子はミトコンドリアに導入された場合に発現し、核に導入された場合には発現しないと考えられる。
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