研究課題/領域番号 |
23658008
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中園 幹生 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70282697)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | レーザーマイクロダイセクション / プロテオーム / 通気組織 |
研究概要 |
根の皮層組織の細胞死によって形成される通気組織は、植物の耐湿性付与に重要な機能を果たしている。しかしながら、その通気組織の形成機構についてはほとんど分かっていないのが現状である。これまでにLaser Microdissection(LM)-マイクロアレイ解析によって、トウモロコシの根の皮層細胞特異的に発現する通気組織形成関連遺伝子を多数同定した。本研究では、トウモロコシの根の横断切片からLMによって、皮層組織を単離して、タンパク質を抽出し、高速液体クロマトグラフィ-質量分析計(LC-MS)による網羅的なタンパク質の解析を行う。これにより通気組織形成過程で皮層組織特異的に蓄積するタンパク質を同定し、通気組織の形成機構を解明することを目的とする。 平成23年度は、タンパク質抽出のために最適化した固定液の検討を行った。このとき、RNAと同様にホルマリンやアルデヒドを用いる共有結合系の固定液は回収効率や品質を低下させることから、脱水系の固定液を用いた。実際には、エタノール:酢酸(3:1)、エタノール:酢酸(3:2)、100%エタノール、アセトンの4種類を検討した。それぞれの固定液を用いて固定したトウモロコシの根をパラフィン包埋し、組織切片を作製したところ、組織の形態およびLMを利用して抽出したタンパク質の回収量などから、エタノール:酢酸(3:1)の固定液が本解析に適していることが明らかになった。今後はエタノール:酢酸(3:1)を固定液として用いて、トウモロコシの根の湛水処理やエチレン処理を行い、LMとLC-MSを組み合わせて、通気組織形成過程で皮層組織にて特異的に蓄積するタンパク質の同定を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画書の平成23年度の研究実施計画の研究をおおむね達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度はトウモロコシの皮層細胞由来のタンパク質の抽出およびLC-MS解析を行う。12時間の過湿処理もしくはエチレン処理をした根と処理をしていない根の皮層細胞から抽出したタンパク質についてLC-MS解析を用いて比較することで、通気組織形成時に蓄積量が特異的に変動するタンパク質を網羅的に同定する。今回のLC-MS解析では、LMにより回収した組織のタンパク質抽出液を直接扱う予定であるため、正確なタンパク質の定量を行うことが重要となる。LC-MS解析では、細胞内に安定して大量に存在し、蓄積量に差がないタンパク質が過剰に検出されることで、目的の発現パターンを示すタンパク質が得られないことが想定される。その場合、蓄積量に差があるタンパク質を検出するために2次元電気泳動を行い、過湿処理の有無で差のあるスポットをゲルから切り出して、LC-MS解析を行うことも検討する。 既に情報が得られているトランスクリプトーム解析の結果とプロテオーム解析の結果を比較し、遺伝子とタンパク質の発現パターンの比較を行なう。特に、トランスクリプトーム解析の結果から、通気組織形成に直接関与する可能性が高い転写因子、活性酸素種の蓄積に関わる遺伝子や細胞壁の分解・再構築に関わる遺伝子については、これらのタンパク質の蓄積が転写産物量を反映していることを確認する。また、転写制御を受けない遺伝子の中から、翻訳制御によってタンパク質の蓄積量が変化するものを選抜することで、通気組織形成過程において重要な機能を担う新たな因子を同定する。最終的にこれらの研究結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度はLMおよびLC-MS解析を開始するので、それらの解析に必要な試薬、キットなどの消耗品を購入する予定である。またLC-MS解析は茨城県つくば市にある農研機構作物研究所に設置されているLC-MS装置を使用する予定であるので、名古屋からつくばへの移動に必要な旅費を計上した。また論文にまとめる際に必要な英文校閲費や別刷費なども計上した。
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