研究概要 |
同祖染色体対合は、減数分裂における異種染色体間の対合であり、パンコムギの育種においては近縁異種から有用遺伝子を導入する際に必要とされる重要な現象である。配偶子形成過程で不分離を起こして数を増すB染色体は、同祖染色体対合をも誘発することが示唆されてきたが、その程度や関与するB染色体領域は未だ解明されていない。パンコムギには固有のB染色体は存在しないが、ライムギのB染色体が導入されており、申請者はライムギB染色体を分断してパンコムギに導入することに成功している。平成23年度には、ライムギB染色体全体だけでなく、その動原体領域も末端領域も、パンコムギと近縁野生種の同祖染色体対合を高頻度に誘発する効果があることを細胞遺伝学的に明らかにした。そこで、平成24年度(最終年度)には、平成23年度に交配した「ライムギB染色体添加パンコムギ系統(2n=42+B”)x ライムギ1R染色体置換パンコムギ系統(2n=42, 1R”(1B))」及び 「パンコムギ純系(2n=42)x ライムギ1R染色体置換パンコムギ系統(2n=42,1R”(1B))」の雑種を栽培し、その減数分裂における同祖染色体1R/1B間の対合のin situ hybridizationによる観察、及び、その子孫での1Rと1B間の乗換えの体細胞におけるin situ hybridization観察とPCR解析を計画した。雑種を温室で栽培してきたが、冬季の異例の低温のため生育が遅れ、減数分裂調査のための葯の固定と1R染色体特異的なPCRマーカー(染色体全長にわたる8マーカ)の選抜を完了したが、年度内に観察・調査を終了できなかった。雑種植物は順調に生育しているので、今後は減数分裂の調査、そして収穫した雑種の種子を用いて体細胞のin situ hybridization観察とPCR解析を予定通り遂行する。
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