研究課題/領域番号 |
23658014
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
平沢 正 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30015119)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | イネ / 光化学系 / 光合成速度 / 個体成長速度 / 純同化率 / 準同質遺伝子系統 / 炭酸固定効率 / RuBP再生速度 |
研究概要 |
インド型多収水稲品種タカナリと日本型水稲品種コシヒカリの交雑自殖後代に見出されたC4植物のトウモロコシに匹敵する高い光合成速度を示す2つの系統(以下、それぞれ高光合成系統1,2という)について、本研究は光合成速度を高くする形質を明らかにし、これに関わる遺伝子座の候補領域を検討することを目的として行う。平成23年度は以下のことが明らかになった。 (1)幼穂形成期、穂揃い期には展開完了最上位葉の光合成速度は高光合成系統1,2がタカナリより大きく、そして、穂揃い期には止葉だけでなく、1葉および2葉下位の葉の光合成速度も高光合成系統1,2がタカナリより大かった。その結果、ポットに孤立個体状態で生育した時の個体成長速度は、純同化率が大きいことによって出穂前および登熟期のいずれにおいても、高光合成系統1,2がタカナリより大かった。 (2)葉内CO2濃度-光合成速度の関係曲線を求め、初期勾配から炭酸固定効率を、そして最大光合成速度からリブロース-1,5-ビスリン酸(RuBP)の再生速度を比較した。その結果、高光合成系統1,2はタカナリに比較して、CO2濃度が大気の濃度以下では炭酸固定効率が高いことによって、そして、葉内CO2濃度が350μmol mol-1以上ではRuBPの再生速度が高いことよって、それぞれ光合成速度が大きくなることが推察された。併せて、RuBPの再生速度と密接な関係のある電子伝達速度は、高光合成系統1,2はタカナリに比較して大きいことがクロロフィル蛍光測定によって明らかとなった。(3)光合成速度の高いタカナリの準同質遺伝子系統を育成するため、高光合成系統にタカナリを戻し交雑し自殖させたF3~F4系統群、および高光合成系統同士を交配し自殖させたF3系統群を育成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はすべての内容にわたって当初の計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
高光合成系統1,2はタカナリに比較して、CO2濃度が大気の濃度以下では炭酸固定効率が低いことによって光合成速度が大きくなることが推察された。そこで、まず光合成のキー酵素であるRubiscoを中心に、葉の窒素量当たりのRubisco量、Rubiscoの活性とRubisco活性化酵素量をタカナリと比較する。ついで、葉肉伝導度を測定して葉肉細胞のCO2輸送能力を比較する。葉肉伝導度に相違が認められた場合は、葉肉伝導度に関わる要因を検討する。併せて、自殖を重ねた高光合成系統とタカナリ、高光合成系統同士の交雑系統を圃場に展開し、C4植物に匹敵する高い光合成速度を示す系統(高光合成準同質遺伝子系統)を見出す。高い光合成速度を示す系統の遺伝子型から、高い光合成速度に関わる遺伝子座を推定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
葉肉伝導度の解析と高い光合成速度に関わる遺伝子座の解析ための物品費を計上する。併せて、研究成果発表のための旅費と論文投稿料を計上する。
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