研究課題/領域番号 |
23658014
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
平沢 正 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30015119)
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キーワード | 育種学 / 遺伝学 / ゲノム / 作物学 |
研究概要 |
(1)まず、インド型多収水稲品種タカナリと日本型水稲品種コシヒカリの交雑自殖後代に見出されたC4植物のトウモロコシに匹敵する高い光合成速度を示す2つの系統(以下、高光合成系統)について、光合成速度が高くなる要因を以下のように明らかにした。 1) CO2濃度が大気CO2濃度以下の、光合成速度がリブロース 1,5-二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(Rubisco)のカルボキシレーション活性によって制限を受けている条件では、高光合成系統の光合成速度の高い主要な理由は、Rubisco活性が高いことではなく、葉肉伝導度が大きいことにあった。 2) 高光合成系統は、有腕突起のよく発達した小さな葉肉細胞と厚い葉肉組織を有していることによって、葉肉伝導度が大きかった。有腕突起のよく発達した小さな葉肉細胞はコシヒカリに、厚い葉肉組織はタカナリに由来する形質であった。 3) 光合成速度がリブロース 1,5-二リン酸(RuBP)の再生速度に律速されるCO2濃度の高い条件では、高光合成系統の高い光合成速度は高い電子伝達速度によっていた。 (2)ついで、高光合成系統のうちの一つ(以下、HPR-A)にタカナリを戻し交雑し自殖させたF4系統群を用いて光合成速度を高めることに関わる遺伝子座の解析を行ったところ、第3染色体長腕,第7染色体短腕及び長腕、そして第9染色体長腕にコシヒカリ対立遺伝子をもつ個体は光合成速度が高く、さらに、これら4個のコシヒカリ対立遺伝子を合わせ持つ系統の光合成速度はHPR-Aの光合成速度とほぼ等しい高い光合成速度を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の一つであるトウモロコシに匹敵する高い光合成速度を示す系統の光合成特性を解明した。最終年では、もう一つの研究目的である高い光合成速度を実現する形質に関わる遺伝子座の候補領域を推定し、著しく高い光合成速度を示す準同質遺伝子系統の作出に向けて遺伝子座を集積したい。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝解析のためにタカナリを戻し交配し自殖を重ねた高光合成系統を圃場に展開し、光合成速度を高めることに関わる遺伝子座を推定する。併せて、タカナリとコシヒカリの染色体断片置換系統群を用いて、コシヒカリ対立遺伝子がタカナリ遺伝背景のイネの光合成速度を高める遺伝子座を見出す。以上の2つの方法で推定した遺伝子座を比較して、高い光合成速度に関わる遺伝子座を推定する。併せて、コシヒカリ対立遺伝子がタカナリ遺伝背景のイネの光合成速度を高める遺伝子座を集積した系統を育成し、育成した系統がトウモロコシに匹敵する光合成速度を示すことを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝解析のためにタカナリを戻し交配し自殖を重ねた高光合成系統を圃場に展開し、光合成速度を高めることに関わる遺伝子座を推定する。併せて、タカナリとコシヒカリの染色体断片置換系統群を用いて、コシヒカリ対立遺伝子がタカナリ遺伝背景のイネの光合成速度を高める遺伝子座を見出す。以上2つの方法で推定した遺伝子座を比較して、高い光合成速度に関わる遺伝子座を推定する。併せて、光合成速度を高める遺伝子座を集積した系統を作出する。
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