研究課題
1.インド型多収水稲品種タカナリと日本型水稲品種コシヒカリの交雑自殖後代に見出されたC4植物のトウモロコシに匹敵する高い光合成速度を示す2つの系統(高光合成系統)の光合成特性を以下のように明らかにした。(1) 展開完了最上位葉の光合成速度は幼穂形成期以降、高光合成系統がタカナリより大きく、その結果、ポットに孤立個体状態で生育した時の個体成長速度は、純同化率が大きいことによって出穂前および登熟期のいずれにおいても、高光合成系統がタカナリより大きかった。(2) CO2濃度が大気CO2濃度以下の光合成速度がリブロース 1,5-二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(Rubisco)のカルボキシレーション活性によって制限を受けている条件では、高光合成系統の光合成速度の高い主要な理由は、Rubisco活性が高いことではなく、葉肉伝導度が大きいことにあった。そして、高光合成系統の大きい葉肉伝導度は小さくかつ有腕突起のよく発達した葉肉細胞と厚い葉肉組織を有していることにあった。小さくかつ有腕突起のよく発達した葉肉細胞はコシヒカリに由来し、厚い葉肉組織はタカナリに由来する形質であることが推察された。2.ついで、タカナリとコシヒカリの染色体断片置換系統群を用いて,コシヒカリ対立遺伝子がタカナリを遺伝背景とするイネの光合成速度を高める領域とその領域の作用機構を検討した。その結果、コシヒカリ対立遺伝子がタカナリを遺伝背景とするイネの光合成速度を高める領域が第1染色体短腕側、第3染色体長腕側、第7染色体短腕側と長腕側の4ヶ所あること、そして、第1染色体短腕側、第3染色体長腕側、第7染色体短腕側の領域は葉肉伝導度を高めること,第7染色体長腕側の領域は葉身窒素含量を高めることによって,それぞれ光合成速度を高めることが推察された。
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