シロイヌナズナや畑地雑草など乾性地に生育する中生植物の種子発芽は、酸化経路を通じたアブシジン酸(ABA)代謝不活性化によって誘導される。しかし、水田雑草など嫌気環境に生育する湿生植物については不明であった。ABA代謝物の定量分析、ABA8’-水酸化酵素遺伝子の発現解析、本酵素の阻害剤であるパクロブトラゾールを添加した種子発芽検定により、湿生植物の種子発芽に必要なABA内生量の低下は、反応に酸素を必要としない配糖体化経路を通じて起こることが明らかになった。種子発芽は植物生活史の最初の過程であることから、ABA代謝不活性化経路選択は、湿生植物の低酸素環境適応に関する重要な進化的機構だと考えられる。
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