新たに作製したエアーフィルター式チャンバーにおける,リアルタイムでの外気温追随式の制御能力を検討した.温度センサをチャンバの外に一個,内側の左右に各一個取り付け,数日間データを取ったところ,精度よく制御できることがわかった.その際,気流が常に一定方向となるので,一台のチャンバーの中で2つの温度区を設けることが可能と思われたので,温度データロガーをチャンバー各所に設置して,温度分布の較差と日変化を調べたところ,かなりよく追随制御をした.次に,実験植物のイネを栽培し,温度差の影響が生育差となって現れるか,調査を行った.晩春のスタート時は問題がなかったが,夏季に入ると5℃差の設定にも拘わらず,2.5℃程度の差しか出なかった(イネの生育量の差も,ほとんどなし).すなわち,30℃を越えるような夏季の気象条件では,チャンバの冷却能力に限界があったので,冷却システムの改造を行った. 改造後,秋季~冬季にコムギをポット栽培し,チャンバーの一方(1/2スペース)を外気温追随年,もう一方(1/2スペース)を外気温+5℃として,温度制御能力とコムギの生育の差を調査した.1月の上旬までは,チャンバーの制御能力は良好であった.しかし,中旬以降になると低温によりヒートポンプを還流する水が凍結し,一時制御が不能となった.そこで,水に変えて不凍液を還流させたところ,満足な結果が得られた.また,コムギの生育にも大きな差が見られた.これで,年間を通じた温度差制御が可能となった.今後は,このチャンバーフル稼働させて,作物の温暖化問題を掘り下げたい. 他方,エアーフィルター式チャンバーの運転と並行して,別システムによるイネに対する温暖化対応実験(二酸化炭素とオゾン)を行った.その結果,光合成において二酸化炭素の倍加がオゾンの加害を防御するという,新たな知見が得られた.
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