研究課題/領域番号 |
23658025
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
菅谷 純子 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (90302372)
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キーワード | ブドウ / アントシアニン / 光 |
研究概要 |
本研究では、青色光が果実の着色、すなわちアントシアニン蓄積に及ぼす影響について、分子メカニズムを解明しようとするものである。前年度までに、青色LED照射により、ブドウ‘巨峰’果皮におけるアントシアニン、特にデルフィニジン系アントシアニンの蓄積に促進的に働くことが示されたため、本年度は、フラボノイド3'5'水酸化酵素(F3'5'H)の遺伝子を制御する上流配列を約1kbにわたり明らかにした。その結果、フィトクロームや、糖にシグナルに関連したシス因子が存在することが明らかになった。また、in vitroでのブドウの果粒着色に対する青色、赤色、白色LED照射の影響について、解析したところ、アントシアニンの蓄積促進が認められた。 さらに、圃場に地植えした‘巨峰’果房に対して青色LED補光をベレーゾン期から行った結果、デルフィニジン系アントシアニンの蓄積促進が認められ、ブドウ栽培現場における青色LEDの利用が有効であることが示唆された。 青色光照射を行った果実の果皮におけるアブシシン酸含有量をUPLC-MSにより分析した結果、青色光照射を行った果皮の方が、行わなかった果皮と比較してアブシシン酸が多く含まれていることが示され、青色光照射による着色促進がアブシシン酸を介して行われた可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
青色光照射に対するブドウ果皮中アントシアニン蓄積に関して、ポット植え樹、成木、in vitroの果粒のいずれにおいても、促進効果が認められ、青色光とアントシアニン蓄積の関連が明確になった。また、本課題における目的の一つであるプロモーター領域の単離とシス因子解析を行った結果、青色光により発現が誘導されるメカニズムに関連すると予想される光誘導関連シス因子が見いだされた。また、アントシアニン蓄積と植物ホルモンのアブシシン酸との関連も見いだされた。これらのことから、本研究は概ね分子メカニズムの解明という目的において進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
青色光照射を行った果皮におけるアントシアニン関連遺伝子の発現について解析を行う。また、平成24年度に見出されたアブシシン酸との関連を明らかにするため、アブシシン酸生合成関連遺伝子の発現等についても明らかにする。 さらに、青色光により発現が誘導されると考えられるフラボノイド3'5'水酸化酵素のプロモーターの解析を行うために、キメラ遺伝子を作成し形質転換体を作成する。そのために、GUS遺伝子とプロモーター領域を連結したキメラ遺伝子の構築を行うこととする。 一方、圃場での青色光照射の実用化が可能かどうかについて検討するため、青色LED補光を平成25年度についても行うこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費については、遺伝子発現解析や、キメラ遺伝子構築に関連した試薬、機器類の購入およびアブシシン酸の定量に用いるUPLC-MS関連の試薬、機器類の消耗品購入に主に用いることとする。 また、研究結果の学会発表を行うための旅費も必要である。 研究結果について論文作成を行うために、英文校閲などにも費用を用いる予定である。
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