本研究では,我々が開発した花弁表皮細胞特異的プロモーター(InMYB1pro)下で,1,葉緑体形成を誘導する転写因子(GLK)を発現させて「緑色」の花弁の花きを作出するための技術と,2,花弁の表皮細胞の形を変化させる転写因子(Mixta=MYB)を発現させて花弁の「質感」を変化させた花きを作出するための技術の創出を目指している.研究実績は以下である. 1,葉緑体誘導による花弁の緑色化: GLKを恒常的高発現発現プロモーター(CaMV35Spro)下につないだ発現ベクターを構築し,シロイヌナズナの形質転換体を作出した.しかしながら,若干の花弁の緑色傾向が見られたが,明確な花弁の緑色化に至らなかった.そこで,葉緑体の分解に関わる遺伝子であるChlorophyllase(Chlase)およびPheophytinase(PPH)をRNAi法により抑制した形質転換シロイヌナズナを作出して花の表現型を観察したが,やはり明確な花弁の緑色化を引き起こせなかった.一方,シロイヌナズナの変異体集団の中に花弁が緑色になる個体を見出したため,花弁の緑色化を目指し,その遺伝子の発現抑制(RNAi)形質転換アサガオの作出を進めた. 2,表皮細胞の形状変化による花色と花弁質感の改変: MixtのホモログであるAtMYB106をInMYB1pro下でCRES-T法により抑制するベクターを構築し,シロイヌナズナに形質転換したところ,花弁細胞と花弁が収縮した花を着けた個体と,逆に花弁細胞が平坦になった花を着けた個体の両方が得られた.同じベクターを用いてトルコギキョウへの形質転換を行い,1個体が開花に至ったが,目立った表現が認められず,他の形質転換系統の開花を待っている.
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