SSRマーカーの構築,多胚種子の起源調査,多胚種子からの純系ホモ個体作出,四倍体紫色アスパラガスからの雌性配偶子由来二倍体の選抜を試みた. 【SSRマーカーの構築】6種類のSSRマーカーについて交雑後代の分離を調査したところ,いずれもメンデル遺伝に適合することが明らかになり,二倍体品種だけでなく,三倍体や四倍体品種のジェノタイピングにも適用可能であることを明らかにできた.本マーカーならびにフローサイトメトリー分析により,二倍体同氏の交配で得られた実生集団の中に,低頻度で出現した三倍体個体を明らかにできた. 播種前に低温湿潤処理を行うことにより,種子の発芽率ならびに多胚出現率(多胚判別率)を向上させることができ,多胚種子の選抜に有用な手法であることを明らかにできた.SSRマーカーを使った多胚種子の起源解析により,多胚種子の起源として10種類のパターンの可能性が示唆され,これらの中には,「1胚珠内に含まれる1個の胚のうに由来する場合」から,「1胚珠内に含まれる2個の胚のうに由来する場合」などさまざまであった.また前者の場合でも,「異なる2個の接合子に由来する場合」と「単一の接合子が胚発生する段階で2個の胚に分裂した場合」という複数のケースがみられた. 10組20個体の多胚種子の中に3個体の半数体が含まれていた.これらの半数体から多芽体を誘導して倍加処理を行う予定であったが,半数体の生育が悪く,倍加処理を施す段階には至っていない. 四倍体紫色アスパラガス同士の交配種子から多胚種子を選抜した.1個体は六倍体もしくは八倍体の高次倍数体であったが,それ以外はすべて四倍体であり,二媒体を選抜することはできなかった.人為的に多胚種子出現率を高めるために,交配前もしくは交配後の雌ずいへのオーキシン(NAA)処理も試みたが,多胚種子の出現を高める効果は認められず,二倍体も出現しなかった.
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