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2012 年度 実施状況報告書

フロリゲン直接注入法を活用したカンキツの幼若期短縮方法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23658031
研究機関佐賀大学

研究代表者

永野 幸生  佐賀大学, 総合分析実験センター, 准教授 (00263038)

研究分担者 松本 亮司  佐賀大学, 農学部, 教授 (40355409)
キーワード園芸学 / バイオテクノロジー / 発生・分化 / 蛋白質 / 植物
研究概要

フロリゲンは花芽形成を誘導する物質である。最近、カラタチを台木として成熟相のウンシュウミカンを穂木として接いだものにロリゲンを直接注入して、花芽形成を誘導できることを見いだした。すなわち、着花しないけれども成熟相にある「栄養的成熟相」の短縮に成功した。しかし、実生樹の開花までの期間の短縮、すなわち、幼若期の短縮には成功していない。そこで、本研究では、ウンシュウミカンに代表されるカンキツを研究材料に、フロリゲン直接注入法の更なる改善を試み、更にフロリゲン直接注入法と他の手法を組み合わせることで、幼若期短縮方法を開発することを目指した。
まず、フロリゲン直接注入法の更なる改善を試みた。その結果、この方法が極めて不安定がわかってきた。昨年度明らかにした品種間差異が顕著であることに加えて、実験を行った年により結果に変動があることがわかってきた。
次に、フロリゲン直接注入法と他の手法を組み合わせについて検討を行った。まず、開花阻害タンパク質であるTFL1の低分子阻害剤の探索を行った。具体的には、コンピュータシミュレーションにより、TFL1の機能的に重要なポケットに結合する低分子化合物候補を探索した。これは昨年度も行い7種類の候補化合物を見つけているが、今年度は大規模に計算を行い、約20種類の候補化合物を見いだした。併行して行った化合物アレイスクリーニングによりTFL1と結合する化合物1種類を見いだした。
次に、これら物質のいくつかについて開花への効果を調べた。化合物アレイスクリーニングにより見つかった1化合物については、植物を枯死させた。また、コンピュータによるシミュレーションで見つかった1化合物については、効果が認められなかった。
また、これら研究においては盛んに組換えタンパク質を使うけれども、そのために有効な研究手法を開発し、国際誌に論文として発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

まず、フロリゲン直接注入法の更なる改善を行った。しかし、上述のように、この技術が不安定であることが徐々にわかってきた。そのため、特に農業現場で使う技術としては、多くの改善が必要であると考えられる。
次に、フロリゲン直接注入法と他の手法を組み合わせについて検討を行った。植物がFTタンパク質の活性を阻害する物質を分泌しているため、開花誘導の効率が悪い可能性がある。TFL1(Terminal Flower 1)というタンパク質がFTタンパク質と拮抗する作用をもつことが知られているが、これがこの阻害物質の最有力候補である。そこで、阻害物質の候補を大規模にスクリーニングした。その結果、今年度は、多数の低分子化合物候補を見いだすことができた。上述のように、これら化合物のうち、安価に入手できるという理由で2種類の物質について開花への効果を調査したが、これらについては効果は認められなかった。今後、残りの化合物の作用に期待が持たれる。

今後の研究の推進方策

フロリゲン直接注入法の更なる改善についても、引き続き検討を行うが、上述のように、この方法が極めて不安定がわかってきたので、前年度に、大きな進展があった「フロリゲン直接注入法と他の手法を組み合わせ」について検討を行う。場合によっては、フロリゲン直接注入法と組み合わせなくても、現在、開発中の方法は有効かもしれないので、その可能性についても検討する。
上述のように、化合物アレイスクリーニングにより見つかった1化合物については、植物を枯死させることがわかったけれども、コンピュータによるシミュレーションで見つかった約20種類の化合物については、まだ十分に効果を検討できていない。それは、これら化合物が高価であるためである。そのため、植物への効果を試す物質をある程度絞り込む必要がある。字数の関係で「研究実績の概要」に記すことができなかったけれども、我々はTFL1と結合する蛋白質をいくつか見つけている。そこで、まず、TFL1結合蛋白質とTFL1の結合を、これら候補化合物が阻害するかどうかを調べる。次に、ここで効果が見られた化合物について、多量に購入し、植物への効果を調べる予定である。

次年度の研究費の使用計画

前年度に、大きな進展があった「フロリゲン直接注入法と他の手法を組み合わせ」について研究に研究費の多くを使用する。具体的には、コンピュータによりシミュレーションで見つかった低分子化合物の購入に研究費の多くを投入したい。その他、組み換え蛋白質の生産など日常的に必要な研究に研究費を使用する。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件) 備考 (1件) 産業財産権 (4件) (うち外国 3件)

  • [雑誌論文] Ultra-Low Background DNA Cloning System2013

    • 著者名/発表者名
      Kenta Goto, Yukio Nagano
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 8 ページ: e56530

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0056530

    • 査読あり
  • [学会発表] バックグラウンドがゼロのDNAクローニング法2013

    • 著者名/発表者名
      後藤健太、永野幸生
    • 学会等名
      平成25年度日本農芸化学会大会
    • 発表場所
      宮城
    • 年月日
      20130324-20130327
  • [学会発表] Zero Background Cloning System2012

    • 著者名/発表者名
      後藤健太, 永野幸生
    • 学会等名
      第35回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121211-14
  • [学会発表] Zero Background Cloning System2012

    • 著者名/発表者名
      Kenta Goto, Yukio Nagano
    • 学会等名
      The 7th Saga University–Daegu University Joint Seminar
    • 発表場所
      佐賀
    • 年月日
      20121112-20121112
  • [学会発表] Whole genome and transcriptome sequencing in Citrus leaves to search floral genes2012

    • 著者名/発表者名
      Takashi Mimura, Hiroaki Suzuki, Ryoji Matsumoto and Yukio Nagano
    • 学会等名
      The 7th Saga University–Daegu University Joint Seminar
    • 発表場所
      佐賀
    • 年月日
      20121112-20121112
  • [学会発表] RNAシーケンシングによるカンキツ遺伝子の網羅的発現解析および開花関連遺伝子の探索2012

    • 著者名/発表者名
      三村高史、鈴木裕明、松本亮司、 永野幸生
    • 学会等名
      九州育種談話会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121011-20121011
  • [学会発表] 「組換えプラスミド構築において偽陽性発生を極限まで低下させる技術の開発2012

    • 著者名/発表者名
      後藤健太、永野幸生
    • 学会等名
      平成24年度日本農芸化学会西日本支部および日本栄養・食糧学会九州・沖縄支部合同大会
    • 発表場所
      鹿児島
    • 年月日
      20120927-20120929
  • [学会発表] 多重宿主組換え法:組換えDNA構築において偽陽性発生を極限まで低下させる方法2012

    • 著者名/発表者名
      後藤健太、永野幸生
    • 学会等名
      第36回蛋白質と酵素の構造と機能に関する九州シンポジウム
    • 発表場所
      宮崎
    • 年月日
      20120906-20120908
  • [学会発表] カンキツにおける開花関連遺伝子の探索および機能解析2012

    • 著者名/発表者名
      三村高史, 鈴木裕明, 松本亮司, 永野幸生
    • 学会等名
      第36回蛋白質と酵素の構造と機能に関する九州シンポジウム
    • 発表場所
      宮崎
    • 年月日
      20120906-08
  • [学会発表] カンキツの開花制御に関わるタンパク質間の相互作用2012

    • 著者名/発表者名
      三村高史, 鈴木裕明, 松本亮司, 永野幸生
    • 学会等名
      第30回日本植物分子細胞生物学会
    • 発表場所
      奈良
    • 年月日
      20120803-05
  • [学会発表] Zero Background Cloning System2012

    • 著者名/発表者名
      後藤健太, 永野幸生
    • 学会等名
      平成24年日本生化学会九州支部例会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20120526-27
  • [備考] 総合分析実験センター 生物資源開発部門(本庄地区)

    • URL

      http://www.iac.saga-u.ac.jp/lifescience/

  • [産業財産権] 開花誘導剤2012

    • 発明者名
      永野幸生、松本亮司
    • 権利者名
      永野幸生、松本亮司
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2011-540549
    • 出願年月日
      2012-05-08
  • [産業財産権] 開花誘導剤2012

    • 発明者名
      永野幸生、松本亮司
    • 権利者名
      永野幸生、松本亮司
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      10830010.4 (ESへの出願)
    • 出願年月日
      2012-05-25
    • 外国
  • [産業財産権] 開花誘導剤2012

    • 発明者名
      永野幸生、松本亮司
    • 権利者名
      永野幸生、松本亮司
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      10830010.4 (ITへの出願)
    • 出願年月日
      2012-05-25
    • 外国
  • [産業財産権] 開花誘導剤2012

    • 発明者名
      永野幸生、松本亮司
    • 権利者名
      永野幸生、松本亮司
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      13/509,854 (USへの出願)
    • 出願年月日
      2012-07-31
    • 外国

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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