研究概要 |
mhm11, nhm1, rhm50変異株の病原性の欠損理由を詳細に解析した.イネ葉にペーパーディスクで傷をつけ,そこにrhm50変異株の胞子懸濁液を滴下し観察したところ,病徴の進展が野生株と比べ著しく抑制されており,Rhm50が宿主細胞内での生育に必要である事がわかった.また,rhm50欠損株をイネ葉鞘に接種した場合には付着器形成はみられるものの,イネ細胞内への侵入が全くみられなかったが,加熱処理したタマネギ表皮に接種したところ,付着器からの侵入菌糸の形成がみられた.以上のことから,宿主細胞内での生育抑制の要因として,宿主によるDNAへのストレスが考えられた. 一方,昨年度に引き続きYeast two hybrid法を用いてMhm11, Nhm1, Rhm50の相互作用の解析を行った.それぞれの全長をAD及びBKベクターにクローニングして接合を行い,相互作用を確認したところ, Mhm11をBKにするとMhm11AD, Nhm1AD, Rhm50ADと相互作用を確認することが出来た. 特異抗体作成,構造解析を目的として上記3種の組換えタンパク質の大腸菌を用いた発現を行った.それぞれのcDNAをクローニングし,発現用ベクターpET28に挿入した.いずれのタンパクも発現が確認できたが,中でもMhm11は可溶性タンパクとして発現出来たので,精製を開始した.現在,His-tagによるアフィニティ精製を終了した.
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今後の研究の推進方策 |
精製Mhm11タンパク質を使用して抗体を作成し,共免疫沈降によりいもち病菌菌体内での複合体形成を確認する.また,精製タンパク質を使って構造解析も試みる予定である. 今回相互作用がみられたYeast two hybrid system を応用して,Rhm50複合体形成を阻害する物質をスクリーニングする系を開発する.すなわち,ホストとなる酵母のCAN1遺伝子のプロモーターを,GAL4プロモーターに置換することで,Yeast two hybrid のレポーター遺伝子として使用できるようにする.このホスト酵母を利用して,Rhm50とMhm11あるいはXhm2とMhm11をtwo hybrid 系で発現すると,タンパクの相互採用がある際にCAN1が発現するようになる.CANはアミノ酸パーミアーゼであり,その作用により,酵母は培地にカナバニンを添加すると,生育が阻害されるようになる.このようなRhm50-Mhm11, Mhn1-Mhm11を発現するホスト酵母を,カナバニン添加寒天培地に混濁し,そこに活性候補物質をしみこませたペーパーディスクをおくことで,タンパク質相互作用を阻害する活性があった場合には,CAN1活性が低下し,ペーパーディスクの周囲に生育ゾーンが現れると考えられる.このような系を構築し,様々な微生物の培養上清などから,Rhm50-Mhm11, nhm1-Mhm11の相互作用を特異的に阻害する物質のスクリーニングを行う.ポジティブスクリーニングなので,得られた活性物質は,酵母のRAD50-MRE11, XRS2-MRE11の相互作用は阻害しないと期待される. こうして得られた活性物質候補のいもち病菌に対する活性を,培地上での生育,変異源への感受性,あるいはイネへの噴霧接種時に添加するなどして調査する.こうして,複合体形成阻害剤のDNA修復と病原性の阻害を確認する.
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