研究課題
ファイトプラズマ(Phytoplasma属細菌)は植物の篩部細胞内に寄生する病原細菌である。ファイトプラズマ病には特効薬が無く、また抵抗性品種も知られていないため、有効な防除法が切望されている。本研究ではファイトプラズマの病原性に関わる因子を標的とし、その機能を阻害する低分子化合物を探索することで、ファイトプラズマ病に対する新規治療薬剤を得ることを目的とする。H24年度は、ファイトプラズマの植物宿主への感染に関わる因子の一つであるMscLを標的とした機能阻害実験を行った。MscLは、浸透圧調節に関わる機械刺激受容チャネルである。ファイトプラズマは植物・昆虫の各宿主体内で自身の遺伝子発現を変動させることによって両宿主に適応しており、マイクロアレイ解析の結果より、MscLは植物への感染時に重要な働きを担うことが示唆されている。MscLチャネルの機能を阻害する塩化ガドリニウムを底面給水によって宿主植物へ投与し、この植物に対してファイトプラズマの感染実験を行った。ファイトプラズマ増殖量を定量PCRを用いて測定したところ、阻害剤処理後3週間において、ファイトプラズマ増殖量の部分的な減少が観察された。この結果は、MscLチャネルが植物感染時におけるファイトプラズマの生存に重要な役割を果たしていることを示していると同時に、本研究により、感染・病原性に関わる因子の阻害が、ファイトプラズマ病の新規防除技術の開発につながる可能性が示唆された。
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Gene
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