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2011 年度 実施状況報告書

Cryトキシンのクリスタル形成機構を利用する画期的なタンパク質生産技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23658048
研究機関岡山大学

研究代表者

早川 徹  岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (30313555)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードタンパク質生産 / 発現ベクター / ペプチドタグ / 凝集体形成 / Cryトキシン / Bacillus thuringiensis / 大腸菌
研究概要

殺蚊トキシンCry4AaのC末端領域には、タンパク質の凝集体形成を促す因子が存在する。本研究ではCry4Aa由来のポリペプチド、4AaCter(Ile696~Pro851)と連結したタンパク質が大腸菌でアルカリ可溶性の凝集体として発現・蓄積することを示し、発現用タグとしての利用を進めている。凝集体形成には4AaCter中に位置する保存配列、Block7(F802~E834)が重要と考えられるものの、その原理に関しては全く明らかでない。 本年度は凝集体形成に関与する機能構造を明らかにするため、Cry4Aa以外に14種類ある130 kDa型Cryトキシン(Cry1, 5, 7, 8, 9, 12, 14, 21, 26, 28, 32, 43, 47, 48)のblock7ポリペプチドをグルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させた。GST融合タンパク質は大腸菌で問題なく発現し、菌体内で凝集体の形成が観察された。しかしその効率はCryトキシンの種類によって異なり、Cry4Aaと同様な高い凝集体形成率(95%)を示したBlock7ポリペプチドはCry5Baや32Aa、48Aa由来のものだけで、特にCry47Aaでは10%以下の低い形成率しか観察されなかった。Block7配列に変異を導入して解析した結果から、Block7配列中の疎水性アミノ酸が凝集体形成に重要であると示唆された。しかしBlock7の配列自体は一般的な可溶性タンパク質に特徴的であり、疎水性アミノ酸の量ではなく、その並び(配列)が重要であると示唆された。一般的にBlock7は4AaCterよりもかなり小さなポリペプチド(33アミノ酸)であり、発現用ペプチドタグとして適している。現在、Cry4Aa由来のBlock7ポリペプチドを利用した幾つかの発現用ペプチドタグを試作している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

全体像には未だに不明な部分が多いものの、タンパク質の凝集体形成に必要なアミノ酸配列の特徴が明らかになりつつある。また130kDa型Cryトキシンの中で、凝集体形成率の高いBlock7配列が判明し、発現用タグとしての利用が容易となった。Cry4Aa由来のBlock7ポリペプチドを利用した発現用ペプチドタグについても幾つかの試作品が構築されている。

今後の研究の推進方策

発現用ペプチドタグの試作を継続する。Cry4Aa由来のBlock7ポリペプチドとHisタグ、プロテアーゼ(HRV 14-3C)の認識配列(LEVLFQGP)を組み合わせて、発現タンパク質をHisタグ融合タンパク質として、もしくはネイティブな状態で生産する新しいペプチドタグを構築する。またプロテアーゼ(HRV 14-3C)自体をペプチドタグに組み込むことも考える。実際にタンパク質の生産を行い、試作したペプチドタグの有用性を検証する。発現タンパク質には抗原として診断薬市場で需要のあるミオグロビン(心筋梗塞マーカー)やシスタチンC (腎機能マーカー)、フェリチン(腫瘍マーカー)を選択し、大腸菌での発現用にこれらの人工遺伝子を構築した上でペプチドタグ下流に組み込む。

次年度の研究費の使用計画

現在、発現用ペプチドタグの試作を継続して行っている。研究費は構築中の新規ペプチドタグや次年度で使用予定の発現タンパク質(ミオグロビン、シスタチンC、フェリチン)をコードする人工遺伝子の作製、及び発現タンパク質の精製に用いるNi-カラムなどの消耗品等を賄うために使用する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Mutational analyses of Cry protein block 7 polypeptides that facilitate the formation of protein inclusion in Escherichia coli.2011

    • 著者名/発表者名
      Hayakawa T., Shimizu Y., Ishida T., Sakai H.
    • 雑誌名

      Applied Microbiology and Biotechnology

      巻: 90 ページ: 1943-1951

    • 査読あり
  • [学会発表] 殺蚊トキシンCry4Aaに由来するペプチドタグの開発と検査薬成分(抗原タンパク質)の効率的生産2012

    • 著者名/発表者名
      早川徹、林雅浩、高木麻里、佐藤真也、岩本繁久、須藤薫雄、酒井裕
    • 学会等名
      平成24年度 蚕糸・昆虫機能利用学術講演会-日本蚕糸学会第82回大会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2012年3月18日
  • [学会発表] 昆虫特異的Cryトキシンの新しい利用法-タンパク質を凝集体として発現・蓄積させる新規なペプチドタグの開発-2011

    • 著者名/発表者名
      早川徹、佐藤真也、岩本繁久、須藤薫雄、酒井裕
    • 学会等名
      第84回日本生化学会大会(招待講演)
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2011年9月22日
  • [学会発表] BT菌由来の新規なペプチドタグは効率的なタンパク質生産を可能にする2011

    • 著者名/発表者名
      酒井裕、林雅浩、佐藤真也、岩本繁久、須藤薫雄、早川徹
    • 学会等名
      第34回 日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2011年12月13日
  • [学会発表] BT菌に由来するポリペプチドタグを利用した検査薬成分(抗原タンパク質)の効率的生産2011

    • 著者名/発表者名
      林雅浩、高木麻里、山崎貴郁、山西勇輝、佐藤真也、岩本繁久、須藤薫雄、早川徹、酒井裕
    • 学会等名
      第34回 日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2011年12月13日

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公開日: 2013-07-10  

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