研究概要 |
殺蚊トキシンCry4AaのC末端領域には、タンパク質の凝集体形成を促す因子が存在する。本研究ではCry4Aa由来のポリペプチド、4AaCter(Ile696~Pro851)と連結したタンパク質が大腸菌でアルカリ可溶性の凝集体として発現・蓄積することを示し、発現用タグとしての利用を進めている。凝集体形成には4AaCter中に位置する保存配列、Block7(F802~E834)が重要と考えられるものの、その原理に関しては全く明らかでない。 本年度は凝集体形成に関与する機能構造を明らかにするため、Cry4Aa以外に14種類ある130 kDa型Cryトキシン(Cry1, 5, 7, 8, 9, 12, 14, 21, 26, 28, 32, 43, 47, 48)のblock7ポリペプチドをグルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させた。GST融合タンパク質は大腸菌で問題なく発現し、菌体内で凝集体の形成が観察された。しかしその効率はCryトキシンの種類によって異なり、Cry4Aaと同様な高い凝集体形成率(95%)を示したBlock7ポリペプチドはCry5Baや32Aa、48Aa由来のものだけで、特にCry47Aaでは10%以下の低い形成率しか観察されなかった。Block7配列に変異を導入して解析した結果から、Block7配列中の疎水性アミノ酸が凝集体形成に重要であると示唆された。しかしBlock7の配列自体は一般的な可溶性タンパク質に特徴的であり、疎水性アミノ酸の量ではなく、その並び(配列)が重要であると示唆された。一般的にBlock7は4AaCterよりもかなり小さなポリペプチド(33アミノ酸)であり、発現用ペプチドタグとして適している。現在、Cry4Aa由来のBlock7ポリペプチドを利用した幾つかの発現用ペプチドタグを試作している。
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