研究概要 |
殺蚊トキシンCry4AaのC末端領域に由来するポリペプチド、4AaCter(Ile696~Pro851)及び4AaB7(F802~E834)と連結したタンパク質は大腸菌で凝集体として発現・蓄積される。タンパク質を凝集体として生産する方法は、既存の方法で調製が難しいタンパク質を大量生産するのに利用できると期待される。ペプチドタグ4AaCter及び4AaB7を利用する画期的なタンパク質生産技術を開発するため、本年度は以下の2点について研究を進めた。 4AaCterを用いたシスタチンC(Cys C、腎機能マーカー)の効率的生産:Cys Cをコードする人工遺伝子(cys C-S1)を合成し、発現ベクター(p4AaCter)を利用した生産を試みた。4AaCterを融合することでCys Cの発現量は大幅に上昇し、簡単な精製操作で大量のタンパク質(7.1±1.1 mg/L culture, 純度87±5 %)が生産できた。組換えCys Cは高度な免疫原性と免疫反応性を備えていた(Hayashi et al., 2013)。本システムは抗原としてのCys Cの生産に適しており、生産コストも大幅に圧縮できることが示唆された。 4AaB7を用いた新規発現ベクターの構築:4AaB7融合タンパク質を発現させるための発現ベクター(pHB7, pHB7PP, pB7H, pB7PPH, pB7HN)を構築した。発現ベクターで用いたペプチドタグは、Hisタグ(H)及び4AaB7タグ(B7)、HRV3Cプロテアーゼ(PP)などを組み合わせて作製した。これらを用いてCys C、もしくはフェリチン(腫瘍マーカー)の生産を試みた結果、4AaB7との融合は発現量の上昇を促すことが示された。しかし4AaB7自体の再凝集性が強く、精製過程でのロスが非常に多くなった。現在、タグの改良及び、使用法について検討している。
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