研究概要 |
殺蚊トキシンCry4AaのC末端側領域に由来するペプチドタグ、4AaCter(I696~P851)及び4AaB7(F802~E834)は連結したタンパク質を凝集体として発現・蓄積させる。このようなペプチドタグは、その毒性等により既存の方法で調製が難しいタンパク質を大量生産するのに利用できる。本研究では4AaCter及び4AaB7による凝集体形成機構の解明及びその利用に関する研究を進めており、本年度は以下の2点について研究を進めた。 4AaCterを用いたサソリトキシン(AaHIT及びBjαIT)の効率的生産:前年度行った抗原タンパク質以外の生産例として、本ペプチドタグを利用した殺虫トキシンの製剤化を試みた。具体的には昆虫特異的サソリトキシンAaHIT及びBjαITをコードする人工遺伝子(aaHIT-S1及びbjαIT-S1)を合成し、発現ベクター(p4AaCter)を利用して生産した。AaHIT及びBjαITは4AaCterを融合することでアルカリ可溶性の凝集体として生産された。バイオアッセイの結果、サソリトキシンはCry4Aaのアカイエカ幼虫に対する殺虫作用を助長することが示された(Matsumoto et al., 2014)。 4AaB7による凝集体形成機構の解明:タンパク質凝集体形成に関与する機能構造を特定する目的で、4AaB7をC末端側から欠失させた様々な変異体を構築してGST融合タンパク質として発現させた。凝集体形成率は4AaB7(凝集体形成率=94.1%)から10及び15アミノ酸(aa)を欠失させると75.1%及び45.9%と順次減少し、その後25aa欠失させた変異体まで約50%の凝集体形成率を維持した。本実験で構築した最小の変異体はわずか8aa (F802PTYIFQK809)の短いポリペプチドであり、この中に必要最小限の機能構造が含まれることが示された。
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