研究概要 |
1. PCR分析用DNAマーカーの選定:雑種系統(#18-11)とカイコ(大造)の28本の染色体を識別するためのPCR用DNAマーカーの選定を行い、15本(第1(Z), 2, 4, 10, 11, 13, 14, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22および26染色体)に対してはDNAマーカーを見つけることができた。2. 雑種系統とカイコ(大造)の交雑F1における蛹期間ならびにゲノムDNA解析:雑種系統(#18-10、18-11および18-12)とカイコ(大造)の正逆交雑F1の蛹期間を調査した結果、いずれの系統を用いたF1においても、雑種系統を母親としたF1雌だけが長くばらついた蛹期間を示した。この結果は、クワコとカイコの正逆交雑F1と同じであることから、雑種系統の蛹期間のばらつきもクワコ同様、Z染色体と常染色体の相互作用により決定されていることが判明した。なお、F1雌に雑種系統雄の戻し交雑を行い、次年度に蛹期間の分離を調べるためのBC1の休眠卵を得ることに成功した。3. 雑種系統の選抜にともなう遺伝子頻度と組み合わせの変動解析:カイコとクワコの雑種系統のF7世代の蛹期間を調査した結果、蛹期間の長い雌雄同士の交雑・選抜してきた3系統(#18-10、18-11および18-12)では,F6世代同様、20~100日前後の一様にばらついた蛹期間を示し、均一で長い蛹期間に収束する傾向は認められなかった。一方,選抜途中(F4)に蛹期間の短い個体の選抜に切り替えた系統(#18-1)では、20日前後の比較的均一な蛹期間を示したが,30日を超える個体もわずかながら現れた。これらの結果から、雑種系統の蛹期間は、少なくとも蛹期間をばらつかせる遺伝子とその度合いを調節する遺伝子の少なくとも2種類の遺伝子群により支配されている可能性が示唆された。
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