ベイト法によってウイルスをはじめとする病原体の検出を試みた.無菌培養したC. elegansをベイトとして病原体の検出を試みたところ,尾部や陰門の形態異常が見られた個体が得られたが,その後の再検討の結果,これらの異常は無菌培養の際に引き起こされた生理的要因による可能性が高いと思われた.しかし,病徴が弱い微生物感染の場合,生理状態が悪い場合に病徴が現れることも考えられるので,微生物感染を完全に否定することはできず,今後,感染の有無についてのさらなる明確な指標が必要と考えられた. 長鎖二本鎖RNA(dsRNA)に注目して継続してスクリーニングを行った結果,合計で3種の線虫からdsRNAを検出した.そのうちの一分離株から得られたdsRNAについて,塩基配列の決定を行うために抽出液からdsRNAを精製し,新興ウイルスの検出法であるRapid Determination System of Viral RNA Sequences (RDV 法)によって遺伝子の増幅を試みたが増幅後のバンドがスメアとなり,塩基配列のためにダイレクトシーケンスに供試ることはできなかった.そのため,単離したdsRNAの逆転写を行った後GenomiPhi V2によってDNA増幅をし,次世代シーケンサーによる解析についても試みたが,塩基配列を決定することができなかった.この理由として,実験に供したdsRNAの量が少ない,または,dsRNAの純度が低かったことが考えられた.現在,より大量に核酸を得るために線虫の大量培養を行っている.また,今回塩基配列決定に供した線虫以外の2種類についても,安定した解析が行えるようなdsRNA量を得られるように,継続して線虫の大量培養を行っている.
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