研究課題
本年度は、Bradyrhizobium属細菌Cluster Iの超近縁菌ゲノム比較で成果があった。Rj2ダイズに共生不和合性を起こすUSDA122株と不和合性を起こさないUSDA110株の超近縁菌のゲノム比較データと、フラボノイド存在下におけるT3SS依存性の分泌タンパク質の解析を行った。その結果、共生不和合性を起こすUSDA122株に特有な分泌タンパク質をコードしている遺伝子122_1969を見いだした。122_1969遺伝子はフラボノイドで誘導されるtts boxを保有しており、約10 kbの稼働性領域としてUSDA110株ゲノムの対応領域にターゲット重複を起こして挿入されていた。USDA122株の122_1969遺伝子破壊株を作成しRj2ダイズに接種したが、共生不和合性はキャンセルされなかった。この結果より、少なくとも122_1969遺伝子のみが共生不和合性を起こしていないと考えられた。しかし、rj2ダイズに接種したところ、根粒形成は野生株と同様であったが、共生窒素固定能が有意に半分となった。この結果は、USDA122株の122_1969遺伝子が共生窒素固定能を上昇させるエフェクターであることを示唆していた。既報の根粒数や感染の制御ではなく、共生窒素固定能を上昇させるエフェクター遺伝子として初めての発見となった。昨年度までの成果として、Cluster IIIでの超近縁菌ゲノム比較により、土壌低栄養細菌がNod factor非依存型の植物共生システムを持つこと、Cluster Iに関しては共生アイランドを獲得前の祖先型ゲノムの特徴を明らかにした。期間全体としてCluster IとIIIの細菌超近縁菌ゲノム比較により、新規の植物共生システムの存在が明らかになり、今後の農業への応用のベースができた。
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