研究課題
砂質な土壌は貧しいとする土壌肥沃度の常識に挑戦するため、実験室におけるモデル実験に利用する土壌をナミビアおよびザンビアにおいて採取した。当初、西アフリカ・サヘル地域において土壌を採取する予定であったが、当該地域のニジェール、ブルキナファソ、ナイジェリアにおける治安の悪化のため、試料採取のための現地調査が困難となった。そこで、同様の試料を採取できる地域として南部アフリカを選定し、さまざまな粒径分布を持つ土壌が存在するナミビアおよびザンビアに赴き、農業の実態調査をするとともに、モデル実験に利用する土壌試料を採取し、分析に供した。 分析の結果、ナミビアの砂質な土壌は、ニジェールの砂質な土壌と同程度の砂含量であったが、シルトと粘土の存在量には明瞭な違いが認められた。すなわち、ナミビア土壌は、シルトがほとんどなく、粘土が約6%程度含まれるのに対し、ニジェール土壌はシルト2%、粘土3%とバランス良く存在していた。このような違いを反映して、ナミビア土壌のほうが固結しやすい可能性がある。したがって、ニジェールとナミビアの土壌を比較することで、砂含量だけではなく、シルトと粘土の存在比も考慮に入れたモデル実験を実施する必要があることが明らかとなった。
3: やや遅れている
本年度中に人工降雨試験を実施する予定であったが、西アフリカにおける治安状況の悪化に伴う新しい試料採取候補地の選定に時間を要したため。
モデル実験土壌試料を100 ccコアに詰めて、人工降雨装置により降雨を与え、土壌の粒径分布や粗大有機物量が土壌の物理的肥沃度に与える影響を評価する。粗大有機物には、安定同位体で標識したトウモロコシを用いることで、有機物分解量を正確に見積もる。物理的肥沃度の指標として、クラストの形成や土壌の乾燥速度を測定する。ポット試験モデル実験で得られた結果を吟味し、いくつかの代表的な処理の組み合わせに対して、温室内でポット試験を行う。処理には土壌の種類と給水量の多寡を考えている。養分は適切な量を化学肥料の形で添加する。ポット試験期間中は、定期的に草丈を測定するほか、ポット下部から流出する溶脱量についても計測する。
西アフリカにおける治安状況の悪化に伴う新しい試料採取候補地の選定に時間を要し、研究に多少の遅れが生じたために、平成23年度執行予定額に残余が生じた。次年度は、この残余と当初執行予定額を合わせて、実験に使用する土壌を採取するための旅費や実験に必要なポットなど消耗品の購入に充てる。また、安定同位体で標識した有機物(トウモロコシ)を作出するための試薬を購入する。
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