研究課題
ダイズの湿害を生育初期に回避することは、水田転換畑でのダイズの栽培を可能にし、生産性の安定・向上に貢献する。本研究ではダイズ湿害の植物体での早期検出に、生物フォトン放射を応用することを目的とする。生物フォトンは呼吸阻害、膜阻害、SH基阻害等で強く放射され、ダイズの湿害の原因として酸素の不足・欠乏、細胞膜等の損傷、ミトコンドリアのエネルギー産生機構の傷害等が示唆されている。そこで、ダイズの土壌環境下で起こる湿害の早期検出に、生物フォトン放射を応用するために、in vitroおよびin vivoでの測定系を確立した。最終年度は、器官特異性およびストレス特異性、さらにダイズ品種間での生物フォトンの放射量の相違に関して検討した。(1)ダイズにおける生物フォトン測定の条件を検討した結果、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ酵素活性測定の条件を利用することができることを証明した。(2)ダイズを播種後、冠水、乾燥、塩および重金属等で処理し根を採取し、タンパク質抽出液に対して生物フォトンを測定した結果、生物フォトンの発生量は乾燥、塩、重金属処理では対照より低く、冠水処理では対照より高く、冠水ストレスを他のストレスと識別できた。(3)ダイズを播種後出芽期に冠水処理し根を採取し、タンパク質抽出液(in vitro)および植物体(in vivo)に対して生物フォトンを測定した結果、in vitroと同様に非破壊条件下でも生物フォトンを測定できることが明らかとなった。(4)ダイズ品種を播種後出芽期に冠水処理し、フォトンカウンターを用いて各器官で放射される生物フォトンをin vivoで測定した。その結果、湿害による生物フォトンの放射を地上部で有意に測定可能であった。以上、ダイズ植物体において土壌環境下で起こる湿害を地上部で植物体の非破壊系で検出するために、生物フォトン照射を利用できることを明らかにした。
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Molecular Biology Reports
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