研究課題/領域番号 |
23658064
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
横田 篤 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50220554)
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研究分担者 |
石塚 敏 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00271627)
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キーワード | 二次胆汁酸 / デオキシコール酸 / リトコール酸 / フマル酸 / 嫌気呼吸 / 腸内細菌 / 大腸癌 / 腸溶性カプセル |
研究概要 |
1.目的:本研究では,大腸内に生成される発癌性二次胆汁酸を低減させる新しい手法として腸内細菌の嫌気呼吸の促進を基軸とするエネルギー代謝制御の有効性に関して検証する. 2.方法:発癌性二次胆汁酸は腸内細菌による胆汁酸の還元的代謝で生成される.そこで電子受容体として有機酸の一種フマル酸を用い,フマル酸を添加した飼料をラットに摂食させ,腸管内でフマル酸呼吸と呼ばれる腸内細菌の嫌気呼吸を活性化させる.これにより胆汁酸の酸化的代謝を促進させ,発癌性二次胆汁酸の生成が低減するか検討する.そこで初年度はラットを2群に分け,コントロール群は基本飼料を,フマル酸群は基本飼料にフマル酸2ナトリウムを最大10%添加した飼料を摂取させ,2週間の試験飼育を行った.また次年度はフマル酸の盲腸への到達度を高めるためフマル酸を腸溶性カプセルに封じ込めてフマル酸2ナトリウムとして2%となるように飼料に添加し,10週間まで飼育した.いずれも最終日に解剖を行い,盲腸内容物を採取,胆汁酸生成量,有機酸生成量を測定した. 3.結果:(初年度)フマル酸ナトリウム5,10%添加群ではフマル酸が還元されて生成したと見られるコハク酸生成が容量依存的に増大した.また,デオキシコール酸やリトコール酸といった発がん性二次胆汁酸生成量が有意に減少した.しかしフマル酸濃度が10%の場合,ラットが下痢を起すなど生育に悪影響が出た.そこで次年度はフマル酸カプセルを与えたが,残念ながら両群とも胆汁酸生成量,有機酸生成量に有意差は見られず,初年度のような効果は観察されなかった. 4.意義・重要性:このような手法による発癌性二次胆汁酸生成抑制の可能性を検証した例はこれまで無く,野心的な試みである.初年度にその可能性が示されたことは本研究の大きな成果であったが,安定的にその効果を発揮するためにはなお克服すべき点が多いことも同時に明らかになった.
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