Hfqタンパク質の過剰発現はFtsZタンパク質の合成低下を引き起こし、細胞分裂を阻害する。平成24年度はこの分裂阻害を指標にした新規スクリーニング系を構築した。構築したスクリーニング系を用い、これまで収集した土壌分離菌のライブラリーを用いて探索を行った結果、Hfq過剰発現株のコロニー形成を回復させるサンプルを27サンプル見出した。得られた2サンプルについてLC-MS解析などにより構造を決定した結果、RavidomycinおよびStreptovaricin Cと同定された。Ravidomycinはアミノ糖を含むアリールC-グリコシド系抗生物質でありRNA合成を阻害する。また、Streptovaricin CはRNA合成およびタンパク質合成を阻害する抗生物質である。本スクリーニング系では、既知のRNA合成阻害剤であるRifampicinが活性を示しており、本結果は理にかなった結果と考えられ、本スクリーニング系の有効性がさらに示された。 本研究により見出された薬剤は、Hfqタンパク質の発現を抑制する、もしくはHfqの機能を抑える化合物であると考えられる。いくつかの病原菌において、Hfqホモログが病原性の発現に関与することが報告されている。本研究により得られた薬剤は、細菌(病原菌)の増殖やストレス応答、病原因子の発現などを抑制することが期待でき、細菌の遺伝子発現制御機構の新たな側面が明らかになることが期待できる。また、このようなRNA代謝反応を標的とした薬剤の探索はこれまで全く行われておらず、新規化合物が得られる可能性が高い。近年の多剤耐性菌に対抗できるような薬剤開発のためのリード化合物となることも期待される。
|