研究課題/領域番号 |
23658077
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西村 慎一 京都大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30415260)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ケミカルゲノミクス / 化学遺伝学 / 生育必須遺伝子 |
研究概要 |
微生物や植物、あるいは動物が産生・含有する二次代謝産物が生物学において重要な研究ツールとなり、創薬シーズとなってきたことは、もはや疑う余地の無い事実である。それらは特定の分子へはたらきかけ、特徴的な作用を示す。ところがその標的分子・経路を同定すること、そして化合物の有用性を評価することは、化合物とゲノム科学を組織的に融合するケミカルゲノミクス研究が盛んになってきた今日においても、容易ではない。一因として、膨大なゲノム情報に振り回されているという事実がある。そこで本研究では、生理活性化合物の作用機序解析のために、生育必須遺伝子にフォーカスしたケミカルゲノミクスの基盤構築を推進している。すなわち2つのモデル微生物を用いることで生物種間での作用機序の差異を検討し、効果的な作用機序推測システムを構築する。一方、得られたデータをもとに、化合物を用いた比較生物学の展開を目指す。 本年度は出芽酵母の生育必須遺伝子の発現量低下変異株からなる変異株コレクションを用いて生理活性化合物に対する感受性試験を行い、分裂酵母については生育必須遺伝子の発現量低下変異株の構築を開始した。出芽酵母を用いた化合物の評価では、作用機序未知のものでも効果的に標的経路が推測できる可能性を示唆する結果が得られた。一方、分裂酵母については複数の生理活性化合物において、対応する標的遺伝子発現量低下変異株が高い感受性を示すことを確認した。すなわち、脂質生合成タンパク質や細胞骨格タンパク質をコードする遺伝子の発現量低下変異株は、それぞれの機能を阻害する化合物に対して感受性が顕著に上昇した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では二種類のモデル生物を用いて生理活性化合物の作用機序解析を行うプラットフォームの基盤構築を進めている。まず出芽酵母においては、すでに本方法論が有効であることは知られていたが、実施者らの手元においてもそれが確認され、さらに、作用機序未知化合物についても特定の経路の同定に至った。次に分裂酵母においては、いくつかの化合物・遺伝子ペアにおいて本方法論が適用可能であることを初めて確認した。試した全ての化合物・遺伝子ペアにおいて相互作用が見られたわけではないが、その問題点の克服は次年度に構築する、大規模データセットを用いた統計解析によって克服されると考えており、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、出芽酵母においては本年度に引き続いて変異株コレクションを用いた化合物・遺伝子間相互作用のデータセットの構築をすすめる。分裂酵母においては変異株を作製し全生育遺伝子の1割ほど作製した時点で化合物・遺伝子間相互作用のデータセットの収集を行う。また、両生物間での相互作用の差異を検討し、その原因を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では組織的な感受性スクリーニングによるデータセット構築と新しい分裂酵母リソースの作製を行っている。次年度も同様の作業を継続するために、研究費は主にルーチンワークに必要なプラスチック消耗品と試薬代にあてる。また、一部は成果発表のための旅費等に充てる予定である。
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