研究課題/領域番号 |
23658079
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
鈴木 秀之 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (10202136)
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キーワード | バイオフィルム / ポリアミン / 大腸菌 |
研究概要 |
大腸菌の場合、バイオフィルム形成にはスペルミジンが必須であることを明らかにした。その場合、スペルミジンは菌体外から取り込んでも、菌体内で生合成されても、あるいは菌体外から取り込んだプトレッシンからスペルミジンを合成してもいいことを明らかにした。大腸菌はプトレッシンをアルギニンあるいはオルニチンから生合成する。プトレッシンの生合成経路が欠損で、スペルミジンを菌体外から取り込むトランスポーターであるPotABCDが欠損となった菌株では、菌体外からプトレッシンを取り込み、そのプトレッシンからスペルミジンを合成した場合にもバイオフィルムが生成されることが分かった。このプトレッシン取り込みにどのプトレッシントランスポーターが働いているのかを調べた。大腸菌にはプトレッシンを取り込むことができるトランスポーターが現在までに6つ知られている。プトレッシンの生合成経路が欠損となり、さらにスペルミジンを菌体外から取り込むトランスポーターであるPotABCDが欠損となった菌株を基に、これら6つのトランスポーター遺伝子を1つずつ潰した菌株を作成し、プトレッシンを含む培地においてバイオフィルムを形成するか否かを調べた。その結果、PlaPというプトレッシントランスポーターを欠損させた場合に、バイオフィルムの形成が著しく低下することが分かった。少なくとも申請者の用いている培養条件においては、バイオフィルム形成にPlaPが働いていることが明らかとなった。なお、この菌株は、他のプトレッシントランスポーター遺伝子は欠損していない。従って、PlaPによるプトレッシンの取り込みを阻害すると菌体外にスペルミジンがない限り、バイオフィルムの形成を阻害できるため、目的とする薬剤はPlaPによるプトレッシンの取り込みを阻害する薬剤である。PlaPのホモログは人には見出されておらず、特異性の高い薬剤となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
化合物ライブラリーをスクリーニングする前の段階にある。これは、スクリーニング法の評価がまだ不十分であるからである。スクリーニング法自体は準備できたが、例えば、同じ条件で、同じ菌株を培養した場合にタイターディシュ上の位置によってどれくらいデータがばらつくか、統計的に有意な結果を出せるかなどの評価が不十分であり、その評価が終わり次第、スクリーニングを始める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
培地に添加することにより、菌体量あたりのバイオフィルム形成量が著しく減少する化合物のスクリーニングを行うわけ訳であるが、同一条件にしたときにどれくらいばらつきが出るかをまず評価する。スクリーニングにより得られた化合物を使い、PlaPによるプトレッシンの取り込み阻害が実際に起こることをラジオアイソトープラベルしたプトレッシンを基質として確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
スクリーニング法の評価が不十分であったため、まだ化合物ライブラリーの購入ができておらず、予算を繰り越している。次年度、この持ち越し分で化合物ライブラリーを調達する予定である。
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