研究概要 |
本研究の目的は、Azospirillum属細菌を広く植物を含む自然界から分離し、新種菌を同定し新種提唱を行うこと、さらにその由来となる植物と分離される菌との特異性を調べ、植物への接種効果を確認することである。本属細菌は多くの植物の根圏に存在し、その高い窒素固定能や植物ホルモン合成能により植物の生育を促進する報告が多くある。しかし16SrRNA遺伝子の系統樹では別の属と入れ子になるなど、その分類体系は混乱しており、また植物種との相互作用特異性についてもよく分かっていない。そこで本研究では、申請者が近年確立した、MALDI型の質量分析器を用いて菌体総タンパク質のスペクトルを比較することにより種レベルで迅速に同定可能な方法を用いて、本属細菌を網羅的に分類する。 平成23年度はイネ科の植物を中心とした植物の根圏サンプルからCongo Redを含む寒天培地で赤色を呈するコロニーを分離した。分離の際には寒天プレートをデシケーター内でろうそくを燃やして微好気条件として分離することにより、本属細菌を効率よく分離することが出来た。約70株の本属細菌を得ることに成功し、質量分析によるタイピングと16SrRNA遺伝子解読の結果、A. oryzae, A. lipoferum, A. br asilenseと高い相同性を持つ株と、新種と考えられる(16SrRNA遺伝子の相同性が98.6%以下である)11株を得た。平成24年度は別経費で海外研修に出ており、実質本研究は進んでいない。 平成25年度は得られた本属細菌をイネに接種し、温室で生育促進効果の高い菌を選抜した。幼苗までの状態で約20%の生育促進効果を持つ菌が得られた。また新種と考えられる分離菌について、新種提唱のため脂質、キノンの外注分析を行っているところである。
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