研究課題/領域番号 |
23658082
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
田口 久貴 崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (90212018)
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研究分担者 |
赤松 隆 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (50133567)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | バイオエタノール / Saccharomyces cerevisiae / D-乳酸 / JEN1 / DLD1 / DLD2 / DLD3 |
研究概要 |
生ゴミに乳酸菌を噴霧し、pH を低下(pH 約3.8)させ、雑菌汚染を防ぎ、バイオエタノールの原料として用いる。生じた乳酸もエタノールに変換できるシステム開発を行う。酵母の乳酸立体異性体に対する資化性を調べた。実用酵母KF-7由来の1倍体酵母NAM34-4Cと実験室酵母S288CをD-乳酸またはL-乳酸を含む酵母最小培地(SDL培地)で培養した。乳酸菌を噴霧した生ゴミのpHに近いpH3.5と、通常酵母を培養するpHのpH5.5で検討した。NAM34-4Cは、L-体よりD-体で速く生育した。菌体量はpH3.5で(A660nm = 14.9)、pH5.5の約3倍高かった。S288Cは、pH3.5でどちらの乳酸培地でも生育しなかった。NAM34-4Cは、pH3.5で20 g/LのD-乳酸から顕著な量(1 g/L)のエタノールを生産したが、pH5.5では生産しなかった。NAM34-4C によるD-乳酸からのエタノール生産培養条件を検討した結果、振盪速度:60 rev/min、初発培養pH:3.0、培養温度:35℃、ペプトン濃度:10 g/L、酵母エキス:5 g/L、D-乳酸:30 g/Lと決定した。このときNAM34-4Cは、3.5 g/Lの乳酸を生産した。乳酸取り込み系タンパク質の遺伝子(JEN1)を、G418耐性遺伝子(Kanmx)で破壊した欠損株、およびJEN1遺伝子のプロモーターをTDH3プロモーターに変換した構成株を育種した。L-乳酸脱水素酵素遺伝子(CYB2)およびD-乳酸脱水素酵素遺伝子(DLD1、DLD2、DLD3)の欠損株および構成化株を同様に育種した。CYB2欠損株は、L-乳酸最小培地では生育せず、DLD1欠損株は、D-乳酸最小培地では生育しなかった。現在、これら育種株を用いて、乳酸からのエタノール生産について調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)エタノール発酵に適した乳酸(L-乳酸、D-乳酸)の選抜と培養条件の検討:実用酵母KF-7由来の1倍体酵母NAM34-4Cは、L-体よりD-体で速く生育し、菌体量はpH3.5でpH5.5の約3倍高かった。NAM34-4Cが、pH3.5で20 g/LのD-乳酸から顕著な量(1 g/L)のエタノールを生産することを初めて見いだした。NAM34-4C によるD-乳酸からのエタノール生産培養条件を検討した結果、振盪速度:60 rev/min、初発培養pH:3.0、培養温度:35℃、ペプトン濃度:10 g/L、酵母エキス:5 g/L、D-乳酸:30 g/Lと決定し、3.5 g/Lの乳酸を生産できた。このように、本項目は目的通りに進展した。(2)変異株の構築用カセットの構築:構成的プロモーターであるTDH3 プロモーターの上流に、G418 耐性遺伝子(KANMX)を連結し、大腸菌ベクター(pBluescriptIIKS+)にクローン化したカセットを構築した。このように、本項目は目的通りに進展した。(3)乳酸代謝に関わる遺伝子変異株の育種:乳酸取り込み系のタンパク質遺伝子(JEN1)を、G418耐性遺伝子(Kanmx)で破壊した欠損株、およびJEN1遺伝子のプロモーターをTDH3プロモーターに変換した構成株を育種した。L-乳酸脱水素酵素遺伝子(CYB2)およびD-乳酸脱水素酵素遺伝子(DLD1、DLD2、DLD3)の欠損株および構成化株を同様に育種した。このように、本項目は目的通りに進展した。(4)各乳酸代謝に関わる遺伝子の構成化株と欠損株の性質:CYB2欠損株は、L-乳酸最小培地では生育せず、DLD1欠損株は、D-乳酸最小培地では生育しなかった。現在、これら育種株を用いて、乳酸からのエタノール生産について調べている。このように、本項目はおおむね順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)2重や3重の変異を有する株の取得と検出マーカーの再利用系の構築:前年度情報をもとに、JEN1 構成化でDLD1 構成化などの2重株や、JEN1 構成化、DLD1 構成化、DLD2 欠損などの3重株変異株を育種する。目的遺伝子が異なる染色体上に存在すれば、掛け合わせにより目的の2重株が取得できる。NAM34-4C はα型であり、a型株NAM26-15A を育種済みである。NPD 株を取得することにより、簡単に両者の2重変異株を取得できる。目的遺伝子が同一染色体上の近傍に存在する場合、形質転換により2重株を取得する。このためG418 耐性マーカーの再利用が必要となる。このためのCre タンパク質発現シャトルプラスミドを既に作成済みである。このプラスミドでG418 耐性マーカーの再利用に成功している。(2) 複数変異を有する株の性質:取得した複数変異を有する育種株の各乳酸(L-乳酸、D-乳酸)に対する資化性と発酵能を調べ、各遺伝子の乳酸資化での役割の情報を得る。また、取得した複数変異を有する育種株の中から、乳酸をエタノール変換できる優れた株を選抜する。(3) 選抜株におけるエタノール生産条件の検討:選抜株に対して、エタノール生産に関する培養条件の検討を行う。(4) グルコース乳酸同時発酵:グルコースを共存させた培地での乳酸からのエタノール発酵試験を行う。経時的に、グルコース消費量と乳酸消費量を測定し、構成化により両炭素源が同時に資化されているかを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)2重や3重の変異を有する株の取得と検出マーカーの再利用系の構築:本項目では、培養用試薬、抗生物質(G418、ゼオシン)、培養器具(プラスチックシャーレ等)、マイクロマニュピレーター消耗品(ガラス針等)、顕微鏡関連消耗品、菌株の確認用試薬(PCRキット等)の各消耗品が必要である。(約30万円)(2) 複数変異を有する株の性質:本項目では、培養用試薬、培養器具(三角フラスコ等のガラス器具)、各成分の測定用品(標準物質、乳酸測定キット、ガスクロマトグラフィーカラム、バイアル瓶、マイクロシリンジ、センサー、HPLCカラム等)の各消耗品が必要である。(約60万円)(3) 選抜株におけるエタノール生産条件の検討:本項目では、培養用試薬、培養器具(三角フラスコ等のガラス器具)、各成分の測定用品(標準物質、乳酸測定キット、ガスクロマトグラフィーカラム、バイアル瓶、マイクロシリンジ、センサー、HPLCカラム等)の各消耗品が必要である。(2)の予算内で行う。(4) グルコース乳酸同時発酵:本項目では、培養用試薬、培養器具(三角フラスコ等のガラス器具)、各成分の測定用品(標準物質、乳酸測定キット、ガスクロマトグラフィーカラム、バイアル瓶、マイクロシリンジ、センサー、HPLCカラム等)の各消耗品が必要である。(2)の予算内で行う。(5)一般試薬、一般器具(マイクロピペット等)一般プラスチック類(微量遠心管、マイクロピペットチップ等、一般ガラス器具(ビーカー、フラスコ、メスシリンダー等)等の消耗品が必要である。(約20万円)
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