研究概要 |
生ゴミに乳酸菌を噴霧し、pH を低下させ、雑菌汚染を防ぎ、バイオエタノールの原料として用いる。生じた乳酸もエタノールに変換できるシステム開発を行う。本研究では実用酵母(NAM34-4C株)から、乳酸取り込み系の遺伝子(JEN1)や乳酸脱水素酵素遺伝子(DLD1, DLD2, DLD3)の構成化株と欠損株を育種し、乳酸から効率良くエタノールを生産できる実用酵母の育種を目的とした。 NAM34-4C株の生育とエタノール生産に対するD-乳酸とL-乳酸の効果について調べた。NAM34-4C株は、L-乳酸培地よりもD-乳酸培地で、より多くのエタノールを生産した。NAM34-4C株によるD-乳酸からのエタノール生産条件の最適化を行い、最大エタノール生産量は2.7 g/Lとなり、初発条件のエタノール量の約4倍となった。初めて乳酸からのエタノール生産条件を見いだした。酵母の乳酸輸送体であるJen1p遺伝子の構成化株(NAM-JC)と欠損株(NAM-JN)を育種した。NAM-JC株による最大エタノール生産量は、NAM34-4C株の最大生産量より2.4倍高かった。一方、NAM-JN株による最大エタノール生産量は、NAM34-4C株の約5分の1であった。このように、D-乳酸からの効率的なエタノール生産には、Jen1pの発現が必要であり、JEN1構成化はエタノール生産性を向上させた。D-乳酸脱水素酵素(DLD1、DLD2、DLD3)に対する変異株(各欠損株と各構成化株)を育種した。DLD1を構成化するとエタノール生産性が野生株より1.5倍向上することが分かった。さらに、DLD2とDLD3の構成化は、D-乳酸からのエタノール生産に影響しないことが分かった。JEN1-DLD1二重構成化株を育種し、エタノール生産量が1.1倍上昇したが、グルコースと乳酸の同時発酵条件の決定には至らなかった。
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