研究課題/領域番号 |
23658083
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研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
北本 宏子 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物生態機能研究領域, 上席研究員 (10370652)
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研究分担者 |
吉田 重信 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (90354125)
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キーワード | 酵母 / 植物 / 接着 / 拡散 |
研究概要 |
植物常在酵母Pseudozyma antartcticaは、液体培養で、植物体分解酵素(PaE)と当酵素の活性阻害物質(MEL)を分泌する。H23年度には、MELが植物表面で、細胞の伸張と生息域の拡大に作用することを確認している。H24年度は、植物表面でP. antarctica株が実際にMELを生産するか調べることとし、P. antarcticaを接種した植物から、MELの検出とP. antarctica のMEL合成に関する遺伝子発現解析を行った。 ①植物共存下でP. antarcticaにより生産されるMELの検出:植物表面でP. antartcicaが生産するMELを検出するために、ポット栽培植物にP. antartcica株を接種後、経時的に植物の酢酸エチル抽出物中に含まれるMELを薄層クロマトグラフィーで分離し、アンスロン試薬で検出を試みた。しかし、植物抽出液のバックグラウンドが高いという問題があった。そこで、P. antartcica細胞懸濁水溶液に植物切り葉を浮遊させた時と浮遊させない場合で、経時的に懸濁液上清の酢酸エチル抽出物中に含まれるMELをHPLCで定量した。その結果、植物葉を加えた細胞懸濁液で、MELの生産量が上昇していることが確認され、保持4日後にその生産量は最大となった。 ②植物表面に接種したP. antartcicaのMEL合成遺伝子発現:P. antartcicaを植物に接種後、日を追って植物体ごとRNAを抽出し、cDNAに逆転写後、MEL分泌に関わるトランスポーター遺伝子(MMF1)の存在量を定量PCRにて解析した。その結果、やはり4日目にMMF発現量が最大になることが確認された。 以上①②の結果から、植物表面で葉面常在酵母P. antarcticaがMELを合成・分泌していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物上でのP. antartcicaによるMEL生産の確認を本年度の目的とした。植物からの有機溶媒抽出物のMELの検出は困難であったが、擬似的に、微生物懸濁液に植物を加えた場合MEL生産性の向上が検出されたこと、ポット栽培植物上でもMEL分泌遺伝子の発現が高まるという2つの実験結果を得た。また、H23年度に解析済みである、MEL非生産菌と生産菌の植物上での増殖の様子の違いから、植物の上でMELが生産されていることはほぼ確実である。これら2年間解析した結果で、論文を執筆し、投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
植物表面でP. antartcicaによるPaEの生産性とその時期を解析する。MELと同様に、PaEの遺伝子発現レベルでの変化を解析するとともに、PaE抗体を使い植物上でPaEの検出を試みる。さらに、P. antartcicaによるMELとPaE生産が、植物の部位(葉と実)で異なるか調べ、P. antartcicaが植物上で生活する上でMELとPaEをどのように利用しているのか明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
植物の栽培や試料の調製に多くの手間がかかるため、非常勤職員を雇用する。また、RNAの抽出と検出、蛋白質(PaE)の検出試薬等実験用消耗品を購入する。成果を発表するために研究会参加費用と論文投稿掲載料に使用する。
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