研究概要 |
単一細胞解析のための空間配置制御技術は、基板上へ細胞をアレイ状に配置し、single cellレベルで遺伝子やタンパク質の機能解析後、細胞を回収する技術である。この空間配置制御技術は、近年、動物細胞で飛躍的に研究が進められている。しかし微生物は、基板表面上に一つ一つを付着配置し、一度配置した微生物を基板表面上から剥離するための制御技術がこれまで存在しなかった。そこで本研究では、土壌中および培養液中の様々な微生物を、1)光学的に透明なITO電極基板上へ電気的に誘引付着させる技術、そして2)電極基板上に付着した微生物を、生きた状態で剥離回収する技術を開発した。 大腸菌は、PBS(-)中で+0.4V vs.Ag/AgClの定電位を24時間印加した条件ではほとんど電極表面上に付着せず、-0.4V vs.Ag/AgClの定電位を24時間印加した条件で、ITO電極表面上に選択的に付着することが確認できた。さらに、死んだ大腸菌は電極表面上には付着しないことが明らかとなった。枯草菌や、Bacillus halodurans, Shewanella violacea, Kocuria rosea, Shewanella oneidensisについても調査した結果、S.violacea,では人工海水中で-0.3V vs.Ag/AgCl,それ以外の微生物は大腸菌と同様PBS(-)中で-0.4V vs.Ag/AgClの定電位を印加した電極上に強く引き寄せられることが確認された。さらに±10mV vs.Ag/AgCl, 9MHzの三角波変動電位を人工海水中またはPBS(-)中で1時間印加することにより、電極上に付着した99%以上の微生物を電極表面上から剥がすことに成功した。電気的に微生物を剥離回収した直後の生存率は、Live/dead Baclight bacterial viability kitsにより80%以上であることを確認した。
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